第11回 表参道の「カフェ・クレッセント」|くらしの本棚

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第11回 表参道の「カフェ・クレッセント」

この度、フリーライターの私が、取材の合間に寄り道したり、誰かに連れて行ってもらったり……。
そんなお店をご紹介する連載を始めることになりました。
とは言っても、私は元来マメな性格ではないので、話題の店にすぐ足を運んで……というショップ紹介ではありません。
日本のあちこちに、わあ、なんて素敵な場所だろう……と心を震わすお店がある。そこには、必ず素敵な人がいる。そんな出会いを、ご紹介できたらいいなあと思っています。

東京青山、骨董通りをトコトコ南下します。
あれ?ないなあ~。通り過ぎちゃったかなあ~と不安になった頃、2階の窓に三日月=クレッセントが描かれた店が見えてくるはず。
ここが、近くにあったら毎日でも通いたいご飯屋さん「クレッセント」です。

オーナーの野木早苗さんとは「大人になったら着たい服」(主婦と生活社刊)で知り合いました。
36歳まで飲食店を営む実家を手伝いながら、アジアの国々を旅して回っていたそう。その後上京し、雑貨店勤務を経て「ヤエカ」のショップスタッフに。
だから、とってもおしゃれさんでもあるのです。
もともとおいしいものを食べるのが大好き!
友人や仕事仲間を自宅に招いては飲んだり食べたりすることもしょっちゅうだったそう。そのうち「これ、明日のお弁当用に詰めてくれたらいいのにな~」という知人たちが増え、とうとうお弁当のデリバリーを始めました。名付けて「宇宙べんとう」!!
「そろそろ、お店が持ちたいな~」と思っていたら、お弁当を届けていた先の人たちが、「よし、じゃあいいところを探してあげる!」と一斉に動いてくれたといいますから、野木さんがどれだけみんなに愛されていたかがわかります。
その中のひとりが紹介してくれたのが、ちょうど空いたばかりだったというこのもと喫茶店。ちょっとレトロなたたずまいも、ゆったりとした席の間隔も一目に気に入って「家賃が思っていたより高かったりと、いろいろ迷ったんですけど、えいと思い切ることにしたんです」と野木さん。

野木さんの作る料理は豪快です。
「南青山ミックス」と名付けられた日替わり定食は、まさに「宇宙べんとう」スタイル。玄米の上におかずがで~んと“のっかった”ワンプレートです。
りんごとルッコラのサラダや、チンジャオロースー、はんぺんの揚げ出しなどをご飯と混ぜながらいただきます。
そのしみじみとおいしいこと!しかもお腹いっぱい!
小洒落たカフェのランチとは対極にある、実直な定食なのです。

このほか、野木さんお得意の餃子をたっぷり食べられる餃子定食、名物「ぎょうざカレー」、ビビンパなども。

さらに、お腹がいっぱいになっても、つい頼んでしまうのが、手作りのどら焼きやプリンです。
これだけを食べに行っても大満足というここだけのスイーツなのです。

私が好きなのは表参道が見下ろせる窓際の席です。
仕事の合間にお腹がすいたら「あ、クレッセント行きたい!」と思う、そんな大好きなお店です。

カフェ・クレッセント
東京都港区南青山6-8-3
☎03-3409-5105
営11:30~16:00 (LO15:30)
土、日曜定休
【201704旅行・東京】

プロフィール

一田憲子(著者)
1964年生まれ。編集者・ライター。OLを経て編集プロダクションへ転職後、フリーライターとして女性誌、単行本の執筆などで活躍。企画から編集を手がける暮らしの情報誌『暮らしのおへそ』『大人になったら着たい服』(ともに主婦と生活社)は、独自の切り口と温かみのあるインタビューで多くのファンと獲得。全国を飛び回り、著名人から一般人まで、これまでに数多くの女性の取材を行っている。著書に『「私らしく」働くこと』、『ラクする台所』(ともにマイナビ出版)などがある。