第10回 2017年はお抹茶のお菓子から|くらしの本棚

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第10回 2017年はお抹茶のお菓子から

takako@caramel milk tea稲田多佳子さんがお菓子を焼く日々のあれこれを綴るエッセイ。
おまけのおいしいレシピもご紹介します。

2017年がスタートして、もうすぐひと月が経とうとしています。新年のご挨拶には少しばかり遅くなってしまいましたが、明けましておめでとうございます。お菓子を焼く日々のこと、今年もどうぞよろしくお願いいたします。

日本のお正月気分も手伝ってか、この一月は、あんこや黒豆、甘納豆、お抹茶など、和の素材を使ったお菓子をたくさん焼きました。中でもお抹茶は、とりわけ好きな素材で、まろやかで深みのある甘み、ほのかな苦み、豊かな香り、冴えた緑色、本当に心惹かれます。

小さな頃からお抹茶のお菓子が好きだった私。思い起こせば、そのルーツは、実家から徒歩圏内にある商店街の、お茶っ葉屋さんからだったように記憶しています。お茶の芳ばしい香りがふわりと漂う昔ながらのお店、そこで売られていた抹茶のソフトクリーム、「グリーンソフト」がとにかく大好きでした。抹茶の他にバニラはもちろん、子どもが喜ぶいちごとチョコレート味なんかもあったと思うのですが、小学生だった私が選ぶのは決まっていつも抹茶味。夏でも冬でも、母と一緒に買い物へ出掛けてはねだり、母が一人で買い物に行く時もお土産にねだり。そんな子ども時代を過ごしたおかげで、大人になった今、実家へ遊びに行くと、母が抹茶のソフトクリームを冷凍庫に用意してくれていることが、時々あります。あのグリーンソフトがなければ、お抹茶とお抹茶のお菓子にこれほど惹かれることはなかったかも知れません。お抹茶と出会えた子ども時代に乾杯!な気分です(笑)。

さて、今回は、年初らしいお話を少し。頭の中にぼんやりとある、やってみたいけれどなかなか手を出せずにいることを、実際にひとつずつやってみよう。3年ほど前、ちょっとした転機のような出来事があってそんな思いが強くなり、知ること、学ぶことについても、もう少し貪欲になりなさいと、自分で自分の背中を押している年の初めです。

以前から、入り口の知識だけでも一通り学んでみたいと思っていた薬膳と日本茶の勉強をした一昨年。結果、始めるまではあれほど興味があったはずなのに、学びを進めるほど、薬膳にはそれほど興味がないことが判明し、自分のことながら少々驚きました。薬膳にはあまりご縁がありませんでしたが、日本茶の世界はとても面白いと感じて、昨年、日本茶にも通じるであろう茶道のお稽古をスタート。意気揚々と通い始めたものの、何をするにも大雑把で物覚えのよろしくない私には、明らかに向いていない事実が発覚。礼儀作法、美しい所作、本当に難しくて。だからこそ逆に、物事と心静かに向き合う時間を持つことは大切、雑な私には必要なお稽古なのではなかろうか、との気付きがここではありました。

昨年の春から秋まで、ほぼ毎週通った半年間。クラス一の落ちこぼれだった私もどうにかこうにか初級の許状をいただき、当初の目標はここまでの予定だったのですが、素晴らしい先生と巡り会えたことも嬉しく、その先生のもとで続けてみることにした次第です。自分に負荷をかけることも時には必要、これも挑戦のひとつ。苦手意識を持ちながらではありますが、毎回のお稽古でいただくお茶とお菓子がとてもおいしいので、今年ももう少し頑張れそうな気がしています(笑)。

自分に合うか合わないか、その世界をもっと深く知りたいと思うかどうかは、頭で考えているだけでは分からないものですね。やってみて初めて、実感として分かるもの。ならば、頭に浮かんでいることには躊躇せず挑戦してみるのが正解。始める前に石橋を叩きすぎて壊し、結局渡らず仕舞い、ということが私には多いのです。やってみたいと思うこと、できそうなことも、難しそうなことも、「まずは着手し、実体験として知ること」をテーマにして、いくつかの新しい小さな一歩を今年も踏み出してみようと思います。

今回のレシピは、スリムなパウンド型でふっくらしっとりと焼き上げた、お抹茶のフィナンシェ。お茶のお稽古を始め、私の中にあったお抹茶愛がますます深まったこともあって、今年ひとつめのお菓子としてぜひご紹介したいと思ったお菓子です。マロングラッセとピスタチオナッツのトッピングはお好みで。アイシングと粉砂糖だけでシンプルに仕上げても、潔く美しいお菓子になると思います。時間と共に味がこなれ、しっとりさも増すので、焼いた日から翌日以降、味わいの変化も楽しんでみてくださいね。

抹茶のパウンドフィナンシェ

材料(17.5×5.7×高さ6cmのパウンド型1台分)

  • A 薄力粉 30g
  •   抹茶 5g
  •   ベーキングパウダー 小さじ1/8
  •  
  • B バター(食塩不使用) 55g
  •   はちみつ 5g
  •   グラニュー糖 55g
  •   卵白 2個分(80g)
  •   アーモンドパウダー 35g
  •   塩 少々
  •  
  • 仕上げ用
  •   アイシング・・・粉砂糖10g、牛乳小さじ約1/2
  •   トッピング・・・マロングラッセ、ピスタチオナッツ、粉砂糖各適量

下準備

・抹茶は茶漉しなどでふるってダマを除く。
・マロングラッセとピスタチオナッツは粗く刻む。
・型にオーブンペーパーを敷く。
・オーブンを170℃に温める。

作り方

①耐熱の容器にバターとはちみつを入れ、電子レンジか湯煎にかけて溶かす。

②ボウルに卵白を入れて泡立て器でほぐし、グラニュー糖と塩を加え、しっかりとよく混ぜる。続けてアーモンドパウダーとBを順に加え、その都度しっかりとよく混ぜたら、Aをふるい入れ、粉気がなくなりなめらかになるまでぐるぐると混ぜる。

③型に流し入れ、170℃のオーブンで25~30分焼く。型から出し、ケーキクーラーにのせて冷ます。

④ケーキが完全に冷めたら、粉砂糖と牛乳をよく混ぜてとろりとしたアイシングを作り、ケーキの表面中央にかける。アイシングが乾かないうちにマロングラッセとピスタチオナッツをのせ、茶こしを通して粉砂糖をふる。

プロフィール

稲田多佳子(著者)
京都に生まれ育ち、現在も京都で暮らす。
HP「caramel milk tea」 で手作りお菓子の写真を掲載したのがきっかけとなり、2004年にお菓子のレシピ本を出版。以来、年に数冊のペースでお菓子やお料理のレシピ本を出版している。代名詞といえば、焼きっぱなしの焼き菓子とロールケーキ。ひとくち食べると思わず心も笑顔になるような、毎日でも食べ飽きず作り飽きることのない、簡単でやさしい味わいのお菓子作りがモットー。
日本茶インストラクター、ティーアドバイザー、ジュニアオリーブオイルソムリエを取得。