第6回 台中を巡る旅の「こぼれ話」 その2|くらしの本棚

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第6回 台中を巡る旅の「こぼれ話」 その2

こんにちは。衣食住、暮らしに関するエッセイを書いている柳沢小実です。ご存知の方も、はじめましての方もよろしくお願いします。

これまで、普段は家でこもって原稿を書いたり、撮影をしたりと、家にいる時間が圧倒的に長かった私。それが、昨年出た書籍『わたしのすきな台北案内』の取材で、一年のうち2か月も海外で生活したことから、暮らし方や考え方、人とのかかわり方が大きく変わりつつあります。

人生80年だとすると、40才はちょうど折り返し地点。ゆるやかにやってくる身体の変化や取り巻く環境など、ままならないことも増えてきますが、その代わりに、大切な人たちのおかげで今の自分がいると感謝したくなるような出来事に、日々遭遇しています。

そんな私の、「半径100m日記」、ゆるゆるとしたお喋りにお付き合いいただけると嬉しいです。

台中を巡る旅のつづきは、ほぼ食のリポートですが、少しでも街の雰囲気や旅の気分などを感じていただけたら嬉しいです。

虎尾へ

雲林県の虎尾(フーウェイ)は、台中と台湾南部あり、芸術文化の盛んな嘉義のちょうど真ん中くらいに位置する街。

1896年には「大日本製糖株式会社」が設立されて、製糖の一大産地となった場所でもあります。そのため、日本統治時代に建てられた古い建物が、街にはたくさん残っています。

中心部はかなり栄えており、警察署と消防署の合同庁舎だった建物には、現在はスターバックスと誠品生活が入っていました。

店内には二階から一階へ滑り降りるポールがあり、古い建物のディティールを残しています。

また、味わいのある建物の雰囲気を壊さないようにしているためか、ロゴや看板も控えめ。それがまた建物と上手く調和しています。スターバックス好きの方には、ぜひ訪れてほしい店舗です。

お昼ごはんは「虎尾生機廚房」で。

元は1916年に建てられた製糖工場の診療所で、家族が病気になったときに食べ物の大切さを知ったオーナーが12年前にオープンした、ベジタリアン料理のレストランです。

ここの料理の最大の特徴は、全て雲林産の野菜で作られていること。そして、野菜だけでもバランスよく栄養がとれるように考えられています。

旬の野菜をつかっているので、来るたびにメニューが変わるのもリピーターが多い理由。店内には食材を販売するコーナーもあり、私もいくつも食材を購入しました。

中庭には、保存食の甕や瓶がずらっと並んでいました。柑橘類や、果実が漬けられている瓶の中身がすごく気になりました。

SHOP DATA
「虎尾生機廚房」
雲林縣虎尾鎮民主路1號
☎(05)632-9778

員林へ

台中と前回紹介をした西螺の、中間くらいにある彰化県・員林(ユェンリン)。ここは友人のご実家がある街。その友人に員林に今度行くよと伝えたら、「そんなところにまで行くの?すごい!」と驚かれました。

その友人に教えてもらった朝市内の潤餅屋さんにたどり着くまでの心温まる出来事(こちらは新刊でお話しています)や、一緒に旅した人たちと夜にかき氷を食べにいったりして、思い出深い街になりました。

ここでもやはり、古い建物に目がいきます。その建物がレストランやカフェだったら、中を見たくて入ることもしばしばです。

上の写真の右側の建物は、いまはピザ屋さんで、元は築86年の歴史がある国営の銀行でした。

古い建物好きのオーナーが、元のたたずまいをいかした内装にしたそう。そのため、手を加えたのは修繕のみで、古さを生かしています。

たとえば店内の壁は、上のほうだけレンガになっていますが、これは元々あった古い壁。後から作った壁を一部壊して、レンガ部分を見せるデザインにしました。

また、銀行のカウンターを模しているところや、床の古いタイルなども見どころです。

ここでは、台湾の具材を使った創作ピザを味わうことができます。写真奥の星型のピザはブロッコリーとクリームチーズ、ミートソースの相性が良くて、生地も美味しい。

そして、特筆すべきはマンゴーの季節だけのデザートピザ。

先に生地を薄く焼いてから、カスタードとマンゴーを乗せています。生地はパリパリで、食感が良く、一緒に行った友人たちと「美味しい!」と取り合いになりました。

SHOP DATA
「Pizza Factory 員林店」
彰化縣員林鎮中山路一段822號
☎(04)836-4561

彰化へ

台中を巡る旅の最後に訪れた街は、台中の南西すぐにある彰化(チャンホワ)でした。

彰化には現役で使われている電車の車庫「彰化扇形庫」や、大きな大仏「八掛山大仏」(こちらも新刊で紹介しています)など、訪れるべき場所がいくつもあります。

彰化は揚げた肉圓(プルプルの皮のなかに肉餡を包んだもの)が有名です。

私もおススメのお店を教えてもらい、暑いさなかに頑張って行きましたが、店主の都合でなんとその日はお休み(!)。しかもその後熱中症にかかって寝込みました……。

美味しいものを追い求める旅も楽じゃない。みなさんもくれぐれもお気をつけくださいね。

台中旅の最後に訪れたレストラン「黑公雞風味餐廳」は、鶏料理が自慢。

台湾の在来品種、黒い羽のニワトリの養鶏や有機農園も運営しており、食材の質と鮮度はピカイチです!

イチジクの農場で放し飼いしているというニワトリは、運動量があるから肉質がぷりぷり。

鶏が一番美味しくなるのは生後128~180日で、特に春と秋の肉質が一番良いそうです。その鶏肉と14日蒸した黒ニンニク、シイタケのスープは、鶏とニンニクの旨みがしっかり出ていて、旅の疲れもすっかり回復しました。

SHOP DATA
「黑公雞風味餐廳」
彰化縣花壇鄉聽竹街50號
☎(04)7882-882

プロフィール

柳沢小実(著者)
1975年、東京都生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。エッセイスト。『大人の旅じたく』、『わたしのすきな台北案内』(ともにマイナビ出版)、『大人のひとり暮らし』『気持ちのいい暮らしの必需品』(大和書房)、『日々のごはんとはたらくキッチン』(KADOKAWA)、『シンプルな暮らしの設計図』(講談社)など、暮らしにまつわる著書多数。確かなもの選びに定評があり、フェリシモで商品開発を手がける。http://www.furarifurari.com/