第4回 便利な粉もの、パンの代わりに「パンマフィン」|くらしの本棚

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第4回 便利な粉もの、パンの代わりに「パンマフィン」

takako@caramel milk tea稲田多佳子さんがお菓子を焼く日々のあれこれを綴るエッセイ。
おまけのおいしいレシピもご紹介します。

パンのあるテーブルの景色がとても好きです。私の住む京都には、おいしいパン屋さんがたくさんあって、「○○っていうパン屋さんのクロワッサン、すごくおいしかった!」「北の方に新しいお店がオープンしたよ!」など、わくわくするような噂が耳に入ると、手帳に書きつけ、時間を見つけては車を走らせています。ぐうたらな性分で、何でも後回しにしがちなクセに、こういうところに関しては行動力を発揮する自分が、我ながら可笑しく思えるくらい。

朝、パンとスープに簡単なサラダでもあれば、ご機嫌に一日を始められるし、お昼、例えばパスタがメインのメニューでも、小さなパンがあるとちょっと嬉しい。夜なら、コトコト煮込み、お肉やお魚のソテーの隣に、ご飯ももちろん合うんだけれど、やっぱりパンが気分です。

パン屋さん巡りは私の暮らしの楽しみのひとつではありますが、何気ない普段の食卓にならば、どこそこの特別なパンよりも、近所にあるパン屋さんや、スーパーに入っているパン屋さんのパンの方が、親しみやすくて日常使いしやすいし、また、その日々のパンが自分の手作りだったなら理想的だよね、というのが、私の感覚でもあって。

おもてなしの時なら、なおのこと。気負うつもりはないのだけれど、同じ振る舞うのなら、お料理もパンもデザートも、うちで作ったものを食べてもらいたいなぁと思うもの。それに、「わ、パンまで手作りなの?すごーい!」なんて言われたりしたら、嬉しいですしねぇ。大人だって褒められたいもんです。

しかしながら、そう上手く行かないのが現実。私なんか特に、何をするにも要領悪い上、時間の使い方が下手なので、カッコつけたところで何かしらボロが出る。頑張って1品多く作ったメニュー、チンしてすぐに出せるようにと電子レンジの中にスタンバイさせておいたのに、その存在をすっかり忘れていたとか。お料理に時間を取られて、うつわやグラス選び、テーブル作りが雑になってしまったとか。掃除が行き届かず、散らかっているものを慌てて押し入れに詰め込んだ舞台裏事情とか。自慢にもならない間の抜けたその手のエピソード、自慢できるくらいに数多く持っています。

あれもこれも全部完璧になんて到底無理だし、疲れちゃう。そんな私を助けてくれるのが、パンの代わりになる簡単な粉ものレシピ。マフィン、スコーン、ワッフルなどの、甘くない塩気のある粉ものは、おもてなしにも普段の日にも、ちょっとしたパンの代わりをきちんと、しかもお洒落に果たしてくれます。

中でも、ここ数年気に入ってよく焼いているのが、パンマフィン。一般的なベーキングパウダーを用いたレシピではなく、インスタントドライイーストで膨らませて作るマフィンで、特に、卵を使わない生地では、香りも食感もパンに近いものになるんですよ。

作り方はとてもイージーで、粉類に水分と油脂分を混ぜる→発酵→型に入れてオーブンへ。ね、簡単でしょう? ボウルひとつに材料をただ混ぜるだけだから、テクニックは要りません。発酵させるための時間は必要になるけれど、その間、ほかの家事に当てたり、近所へ買い物に出たり、本を読んだりできるから、案外効率的とも。それに、発酵を早く進めたければ、より温かい場所へ置いたり、イーストの量を少し増やしたりしてもいいし、ゆっくりさせたければ逆に、涼しい場所へ置く、イーストの量を少し減らす、などと、ある程度のコントロールも可能です。

そこで、今回は、じっくりあめ色に炒めた玉ねぎを丸ごと1個分焼き込んだ、食事向けのパンマフィンレシピをご紹介します。食卓でプレーンと同じように使えるシンプルな味わい、かつ、これだけでも小腹が空いた時のおやつにぴったり。

こねずに焼ける、ソフト系の可愛いパンみたいなマフィン。お菓子を焼く人である私が、お菓子を焼く人の目線で作ったレシピです。パンを焼く習慣のない方や、イーストはまだちょっと使い慣れなくて余らせがちになっちゃうという方にも、親しんでいただけるんじゃないかな。

なんちゃってパン、なのだけれど(笑)、この程度の手間でこの味ならまた作りたいな、なんて、気に入ってもらえたら嬉しいです。

炒め玉ねぎのパンマフィン

材料(直径7cmのマフィン型 6個分)

  • A 強力粉 80g
  •   薄力粉 70g
  •   きび砂糖 10g
  •   塩 小さじ1/4
  •   インスタントドライイースト 小さじ1/2~3/4
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  • B 牛乳 100g
  •   プレーンヨーグルト 80g
  •  
  • オリーブオイル 25~30g
  • 玉ねぎ 1個
  • トッピング用のバター 適量

下準備

・玉ねぎは薄切りにする。
・オーブンペーパーを約12cm角に切り、型にくしゃっと敷き込む。

作り方

①フライパンにオリーブオイルを熱し(分量外)、玉ねぎを入れ、あめ色に色づくまで炒める。

②ボウルにAを入れ、泡立て器でよく混ぜてふるい合わせる。B(合わせて電子レンジで人肌程度に温めて)とオリーブオイルを加え、泡立て器かゴムベラでなめらかになるまでよく混ぜる。①を加え、ゴムベラで全体に混ぜ込む。ボウルの内側についた生地をゴムベラできれいにし、ラップをかける。室温~暖かいところに置き、生地が1.5~2倍程度に膨らむまで発酵させる。

③オーブンを190℃に予熱する。②を底から軽く混ぜ返して、型に分け入れ、生地の表面中央にバターを少量ずつのせる。オーブンの温度を180℃に下げ、16~18分焼く。

※発酵時間の目安は、生地の温度や室温にもよりますが、1~2時間程度です。

※いちばんの食べ頃は、作りたての温かい状態~作ったその日のうち。冷めたらレンジなどで軽く温め直すと、ほわんとしたやわらかさが戻ります。

※マフィン型の下準備ではグラシンカップがポピュラーですが、焼き立ての熱い生地はグラシン紙にくっついて剥がし難くなるため、オーブンシートを敷きました。

プロフィール

稲田多佳子(著者)
京都に生まれ育ち、現在も京都で暮らす。
HP「caramel milk tea」 で手作りお菓子の写真を掲載したのがきっかけとなり、2004年にお菓子のレシピ本を出版。以来、年に数冊のペースでお菓子やお料理のレシピ本を出版している。代名詞といえば、焼きっぱなしの焼き菓子とロールケーキ。ひとくち食べると思わず心も笑顔になるような、毎日でも食べ飽きず作り飽きることのない、簡単でやさしい味わいのお菓子作りがモットー。
日本茶インストラクター、ティーアドバイザー、ジュニアオリーブオイルソムリエを取得。