パンからビールをつくりたくて、転職しました!(後編)|くらしの本棚

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パンからビールをつくりたくて、転職しました!(後編)

今年も日本ビール検定が9月29日(日)に開催されます。
今年で8回目を迎え、その受検者総数は23,881名。ビール検定をきっかけに、人生がどのように変化していったのか。この連載では、検定合格後の人生にスポットを当てて、合格者へのインタビューをお届けします。
ビールとの出会いが、人生を変えた瞬間!ぜひ、お楽しみください。

日本ビール検定の公式サイトはこちら

<梶山紀光さん>

プロフィール

・現在のお住まい →埼玉県鴻巣市
・家族構成    →妻、こども3人
・現在の職業   →会社員
・趣味      →マラソン、トライアスロン、チェス、農業
・自分PR    →身体の強化トレーニングで行っていたランニングスタイルが独自の進化を遂げて、いつの間にやらハダシで走るようになりました。大自然を肌で感じながら今では100kmを走ることができます。パンとビールとランの奥深さにはまっています!



編集部:前回の記事では、パンをこよなく愛する梶山さんが、パン加工メーカーからクラフトビール会社に転職したお話を伺いました。それはいつか「古代メソポタミア時代のときのように、パンからビールをつくってみたい」という夢ができたから。さて、その夢は実現したのでしょうか?

梶山さん:はい、それは昨年2018年に実現したのです。

編集部:それはすごい!どうやって実現できたのでしょうか。

梶山さん:パンからビールをつくってみるアイデアを提案しました。そうしたところ大変共感してくれて、ブルワリー「Tokyo Aleworks」の製造・品質管理責任者であるボブ・ストックウエルさんを始めとするスタッフの方々、そして経営者の方の絶大なバックアップをいただき、ビールの設計やスケジュールを立てることができたのです。仕込み開始は2018年・秋。最高の瞬間でした。

編集部:通常のビールづくりと、パンを原料にしたビールづくり。違いはあるのでしょうか?

梶山さん:仕込みの工程で、パンを投入します。麦汁とパンが融合していき、粘土質のペースト状になっていく姿は、通常のビールづくりとは大きく違います。パンの魂がビールと溶け合っていく様子には、釘付けになりました。


撮影:©ビアジャーナリスト宮原佐研子


編集部:商品の名前は?

梶山さん:「PUNKY BREWSTER(パンキーブリュースター)」です。実はこれ、昔、アメリカで放送されていた人気のドラマの名前からつけたんですよ。ボブさんが初めて味見をしたとき、このドラマタイトルが浮かんできて、一押しでした(笑)。

私もいくつかネーミング案を提案したのですが、頑として譲らず。パンとブリュー(醸造する)とスター(ヒーロー)が合わさった名前がつけられ、今では私もお気に入りです。

編集部:気になるお味は。パンらしさってどんな感じですか?

梶山さん:出来上がったビールをボブさんと一緒に乾杯しましたが、パンは飲み物じゃないので、飲み物にしたときの香りや舌触わりなどの表現は、簡単には表せないことを知りました。もっと試行錯誤を繰り返し、味の表現方法を探求したいと思います。

編集部:令和になった今、新たにチャレンジしていることはありますか?

梶山さん:はい、実は醸造所の立ち上げプロジェクトに参加しています。自分がお客さんとして通っていた飲食店のオーナーさんから、醸造所の立ち上げに誘っていただきました。そして、それを展開するなかでの野望としては、パンとビールを融合して一つの新しい価値あるビールをつくってみたいと思っています。
正直それは誰がつくろうと、どの時代につくろうと関係ないと思いますが、環境があればそれは最大限に活用したいです。

編集部:夢がどんどん広がっていますが、梶山さんのチャレンジの源を教えてください。

梶山さん:「探究心」でしょうか。それがチャレンジの源ですね。生活する上であまり必要ないこと(むしろ家庭でのカオスを生み出すだけ)ですが、一歩入り込むことによりまた別の深い世界が広がっていく。
コツコツ自分のなかで積み重ねたものが、ある閾値を超えると「達成感」や思いもよらない回りからの「承認」というカタチで循環している感じです。ただそれは単なる副産物であり根底にあることは、「探究心」だと思うのです。
また、パンからビールのように、元あるものを足がかりにして別のエッセンスを加えることにより原型から全く別のものが見え、新しい表現ができる面白さは強く実感しています。



 

プロフィール

大登貴子(著者)
1970年北海道生まれ。サッポロビールに入社後、広報業務に従事。2012年、ビール文化を更に発展、普及させることを目的として「日本ビール文化研究会」を立ち上げる。現在、同会・理事事務局長。活動は、日本ビール検定(愛称:びあけん)主催、出版、セミナー開催など。びあけんは、本年で第8回となり、過去7年で約24,000名がチャレンジしている。今年は9月29日(日)全国5都市で開催予定。

びあけん公式HP