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ソーシャルゲーム・コンテンツ別徹底分析

【第2回】第1章 流行っているソーシャルゲーム同士はどれくらいユーザーが重複している?

2016.08.18 | 光井誠一(株式会社ゲームエイジ総研)

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当社(ゲームエイジ総研)は、2011年秋より『Monthlyゲームマーケット・トレンド・レイティング』の発行を開始し、2012年10月で発行1周年を迎えた。その間、数多くのソーシャルゲームコンテンツの調査を行い、各コンテンツのMAU、MPU、課金率、ARPU、ARPPUなどの各種KPIデータがかなり蓄積されてきた。その結果、現在のソーシャルゲームマーケットを代表するような有名コンテンツは毎月50~100万人規模のアクティブユーザーを抱え、そのうちのトップクラスのコンテンツは課金率が20%を超えることもこの調査を通じて明らかになった。

最初の章では、これらのトップクラスのコンテンツ同士のユーザー重複状況や、それによる課金率の違いといった部分をクローズアップする。今回、対象としたコンテンツは『怪盗ロワイヤル』『戦国IXA』『FINAL FANTASY BRIGADE』『パズル&ドラゴンズ』『釣り★スタ』の5タイトル。

 

ファンはSNSプラットフォームに縛られず、重複ユーザーが多数存在する

 

 

【図1】はこれら5タイトルのユーザー重複状況をクロス集計したものである。図表が3つあるが、上段(図1-図表I)がMAU(非課金ユーザーを含むアクティブユーザー全体)のユーザー重複状況、中段(図1-図表II)がMPU(課金ユーザー)のユーザー重複状況、そして下段(図1-図表III)は、その重複ユーザーセグメントごとの課金率を集計したデータとなっている。図1-図表I/IIの重複率は横計になっているので、データを比較する際は水平方向に見ていただきたい。これを見ると、それぞれのタイトルから見てユーザー重複率が高いタイトルは以下のようになっている。

 『怪盗ロワイヤル』 ⇒ 釣り★スタ(MAU重複率:21%/MPU重複率:20%)
 『戦国IXA』 ⇒ 怪盗ロワイヤル(MAU重複率:20%/MPU重複率:23%)
 『FINAL FANTASY BRIGADE』 ⇒ 怪盗ロワイヤル(MAU重複率:28%/MPU重複率:24%)
 『パズル&ドラゴンズ』 ⇒ 釣り★スタ(MAU重複率:11%/MPU重複率:24%)
 『釣り★スタ』 ⇒ 怪盗ロワイヤル(MAU重複率:27%/MPU重複率:32%)

この5タイトルの中でMAUが多いのは『怪盗ロワイヤル』と『釣り★スタ』である。9月のMAUはそれぞれ104万人、112万人と共に100万人を超えている。但し、『怪盗ロワイヤル』はMobage、『釣り★スタ』はGREEを代表するタイトルであり、それぞれのビジネスフィールドが異なる。にもかかわらず、実際にはこのようにSNSプラットフォームが違ってもそれぞれのユーザーはかなり重複していることが分かった。

また、その他のタイトルに目を移すと、『戦国IXA』と『FINAL FANTASY BRIGADE』からは、この2タイトルの重複率が1位と2位を占めている。非常に興味深いのが『パズル&ドラゴンズ』で、MAU重複率で『釣り★スタ』『怪盗ロワイヤル』が上位を占めているのは他と同じだが、その比率は10%前後にとどまっており、他のタイトルに比べるとかなり低い。この理由を考えると、この5タイトルの中で、唯一『パズル&ドラゴンズ』だけが、フィーチャーフォンとパソコンのどちらにも対応しておらず、iOSおよびAndroidのみのタイトルリリースであり、またいずれのSNSからもサービスが提供されておらず、直接マーケットからコンテンツを購入するという特殊な位置づけにあることが大きく関連しているのではないだろうか。

【図1-図表III】は重複ユーザーごとの課金率を示したものだが、最も課金率が高いのが『釣り★スタ』と『パズル&ドラゴンズ』の組み合わせで36%と非常に高い数値を示している。この両タイトル、共通しているのがプレイヤーの中心年齢層の高さで、特に『釣り★スタ』は30代後半から50代前半のユーザーが多く、特に年齢層が高いのが特徴となっている。『パズル&ドラゴンズ』は『釣り★スタ』ほどではないがやはり30代や40代にかなりの数のユーザーが存在しており、課金率も他の世代に比べて30代~40代の方が高くなっている。また、『釣り★スタ』はかなりの大規模なプロモーション展開が印象に残っているが、このあたりが課金率を押し上げている主な要因として挙げられる。

 

『釣り★スタ』よりも『怪盗ロワイヤル』の方が課金適性が高い

 

 

この5タイトルの中でユーザー人口が多い『怪盗ロワイヤル』と『釣り★スタ』の、それぞれMobage/GREEのフラッグシップタイトルに絞ってグラフ化したものが【図2】である。左側が両タイトルのMAU重複状況、右側がMPUの重複状況となっている。

基本的にMAUもMPUも重複ユーザー率がそれぞれ13%、14%とさほど変わらず、基本的には似た傾向を示している。但し、MPUになると『怪盗ロワイヤル』のみプレイしているユーザーの比率が高まる傾向が見られる。『怪盗ロワイヤル』のユーザーの方がやや課金適性が高いということだろうか。

ソーシャルゲームについては、その多くがF2P(基本プレイ無料+アイテム課金)という非常にプレイ障壁の低い課金システムを採用していることや、フィーチャーフォンやスマートフォンといったモバイルデバイスに対応しているコンテンツは、ゲーム目的の有無にかかわらず、基本的に対応デバイスを常時携帯しているといったことから、中毒性、あるいは依存性が強くなりやすい傾向があるといえる。また、2012年7月から正式に規制されたが、以前は「コンプガチャ」といった、さらにそれに拍車をかけるゲームシステムも目立っていた。しかし、ソーシャルゲーム市場も急成長の時期を過ぎ成熟期のフェーズを迎えた今、マネタイズという手段がいたずらにユーザーの射幸心を煽るのではなく、そのことによりプレイの幅が拡がる、またプレイによる楽しみが“深化”するといった方向に使われることが、マーケットの適正化、ひいては中長期的な視点におけるマーケットの発展につながるのは間違いないだろう。

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