【第3回】第一場「さよなら、ゴーインジャー」 ―(2) | マイナビブックス

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ヒーロー ア ゴーゴー!~遊園地編~ 上演台本

【第3回】第一場「さよなら、ゴーインジャー」 ―(2)

2016.03.24 | 鈴木智晴

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そこへ、マルゴツランドの担当・屋柄モリオが入ってくる。

 

モリオ    ヒーローの皆さあん。

芦田     おおモリオさん。

モリオ    すみません、ろくにご挨拶もできずに。遠路はるばる、ありがとうございます!

ヒヨミ    (ゲンに)お兄ちゃん、この方はどなた?

ゲン     この遊園地の担当の方だよ。

モリオ    当マルゴツランドを運営しておりますマルゴツコーポレーションのジェネラルマネージャ、通称GMをやっております、屋柄モリオと申します。

ゲン     立派な遊園地ですね!

モリオ    バタバタ続きだったのですが、なんとかオープンにこぎつけられそうです、ふう。明日のヒーローショー、楽しみにしてますね! 何と言っても、記念すべき「マルゴツランド」オープニングセレモニーの目玉なんですから! (ヒヨミに)……あ、新キャラ! 知らない人がいるう! 半年前にいらしたときにはお見かけしませんでしたよね?

ゲン     今回が初現場で。

ヒヨミ    源鵯未といいます! よろしくお願いします!

ゲン     妹です。

モリオ    そうなんですか。たしかによく見ると鼻のあたりが………、

葵山     屋柄さん、

モリオ    似てませんねえ!

葵山     ジェネラルマネージャさん、

モリオ    (即反応)呼びました? あ、明日のことですね! 明日はですねえ、ドカーンといきますから。そのためにヒーローの皆さんにも、こうして前乗りして頂いたんです!

ゲン     温泉もあるんですよね、ここ。

モリオ    浸かっちゃってください! 肩まで! (掛かっているゴーインジャーのスーツを見て)あ、出た、ゴーインジャー。街の子ども達もゴーインジャーが大好きなんですよ。楽しみだなあ、明日のショー。(ゲンに)ショーでは何役をやられるんですか。

ゲン     ショーキョックです。

モリオ    悪いヤツだ! 適材適所!

ゲン     ハハハ……。

芦田     明日のMCは任せちゃっていいんですよね。

モリオ    それはもううちの人間が……、あそうだ。改めてご紹介しなくては。(外に向かって)オマエ。

 

全身ドリルの屋柄シゲミが入ってくる。

 

シゲミ    アナタ。マルゴツコーポレーション最高責任者の屋柄シゲミと申します。ようこそ、マルゴツランドへ。

モリオ    こらこら最高責任者とか日本語だめだって。CEOです。

シゲミ    チーフ・エグゼクティブ・オフィサーです。

モリオ    で私がGM、ジェネラルマジネージャをやっております。

あゆみ    ああそうですか。

モリオ    明日はこちらのシゲミがMCを担当いたします。

ゲン     あの、で、これ(ドリル)は。

シゲミ    ……あ?

モリオ    気になっちゃいます?

シゲミ    (少しだけ照れて)……ドリルです。

千菜     ですよね。

葵山     なんでまたドリルを全身に。

モリオ    それは私のほうからご説明させて頂きたく……。まず、明日の流れなのですが、こほん、明日は9時30分よりオープニングセレモニーを、園内中央、マルゴツ広場にて行います。続いて、私がこう、もにょもにょと挨拶しているところに現れる、謎の怪人「ドリル姉さんグレート」。

ゲン     グレート。

あゆみ    夢のある単語ですね。

モリオ    やはりご当地のオリジナル怪人がいたほうが盛り上がるんではないかと思いまして。で、そんなDNG(略)にさらわれる私「きゃー」。ざわつく客席。「あのハッピの人を救ってー」。そこに現れる「衝撃戦隊ゴーインジャー」。ズズダッタッタ、タタタタ~♪

芦田     そこでショーにいくわけね。

モリオ    集まった子ども達も、ゴーインスピリッツアゲアゲになること間違いなしですよ。ゴーインジャーの皆さんにはまずこのドリル姉さんを粉砕して頂きまして、意識を取り戻す、うちのシゲミ。そこで正気に戻った彼女がそのままショーのMCも担当していく、と。

あゆみ    そんなこと急に言われても。

シゲミ    必殺技はマルゴツボンバーと、(ちらっと足元を見て)飛び蹴りです。

あゆみ    ドリルは使わないんですね。

モリオ    いかがでしょうかと。

シゲミ    何でもやらせて頂きます。キュイイイン!(ドリル回転)

ゲン     いやそうじゃなくて。せっかくのご提案を申し訳ないんですけども、

シゲミ    マルゴツボンバー!

モリオ    ドリルが上向きのときは上機嫌という設定なんです。

ゲン     あの、以前こちらにお邪魔したときも言いましたけどね、今回のショーはパッケジショーと言って、あらかじめストーリーだとか動きだとか、大筋が決まっちゃってるものなんで、

芦田     あまりサブキャラが前に出てくると、かえって浮くと思うんすよねえ。

モリオ    そこはうちのCEOの巧みなアドリブ力で、

シゲミ    (パコンパコンとドリルを外す)……。

モリオ    オマエ。

 

作業員、入ってくる。

 

作業員    GM、観覧車、オッケイです。

モリオ    でかしましたよ。持ち場へ。

作業員    はい!(退場)

あゆみ    (上手側の幕をちょっとめくって)あのでっかい観覧車のことかな。

芦田     うお、でけえ。

ヒヨミ    綺麗。

モリオ    ……ショー台本をあらかじめ拝見させて頂きましたが、物語中盤、6人目の戦士・ゴーインシルバーが遅れて登場されますよね?

芦田     されますね。

モリオ    これは提案なのですが、その登場シーンを是非、当マルゴツランドの目玉である、あの巨大観覧車のてっぺんからの登場にしてみてはいかがかと。

一同     は?

モリオ    インパクトあると思うんですよねえ!

シゲミ    アナタ。昨夜も話したけど、あの観覧車は一周するのに24分かかるのよ。

あゆみ    てっぺんから地上に降りてくるまで12分ですか。

モリオ    そこはもう、「とーう!」って。

千菜     とうじゃなくてさ、

ヒヨミ    お兄ちゃん、私、死ぬの?

モリオ    いざって時は演出プランに是非。

ヒヨミ    いざっていつですか、隕石でも落ちてきた時ですか……。

芦田     とりあえず、今、チーフが外してるんで、細かいやつはまた後ほどでいいですか。

モリオ    なら仕方ないね。

シゲミ    では、私どもは一旦失礼して、

モリオ    だね。また後ほど。とにかく明日は大勢の人がこのマルゴツランドにやって来、(遥太のゴーインジャーロボに気づき)ロボがいるう!

シゲミ    本当!

芦田     あ今気づいちゃいました? 厄介だなあ。

シゲミ    (千菜の子どもに気づき)アナタ見て。

モリオ    おお、可愛いね~。

シゲミ    食べちゃうぞ~。

千菜     (苦笑い)

 

モリオの携帯が鳴る。

 

モリオ    市長からだ。この期に及んで何の用だ。(電話に出て)……はい、屋柄ですが。今さらそんなことを言われても、我々は断固として、この土地の権利を市に譲る気はありませんから。

シゲミ    商標も渡すつもりはないと伝えておいて。

モリオ    まずい。マルゴツランド建設に反対している地域住民どもが押し掛けてくるらしい。

シゲミ    アナタ。

モリオ    オマエ。ちょっと追い払ってくる。(退場)

シゲミ    (満遍の笑みで)ではリハーサルまでの間、少しだけ園内をご案内致しましょうか!

あゆみ    (小声で)めっちゃ地元で反対されてるっぽいですね……。

芦田     田舎特有のアレっすね。俺らには関係ないけど。

ゲン     だいたい需要あんの、こんな田舎に。

芦田     俺らはお仕事が頂けるだけでラッキー、っと。

シゲミ    何か。

ゲン     あいや、何でも……。ここの温泉は何に効くんですか?

シゲミ    主に「 × × × 」です。

芦田     リハ終わったら行きましょうよ!

遥太     入りたい。

葵山     おい待て、君はまだ動き確認してないんだから、まずはそこからだろう。

遥太     (聞かずに)混浴だったりして。

あゆみ    えー、やだ。

ヒヨミ    あとで背中流させてください先輩!

千菜     私はパスな。

 

一同、退場。西陽がテント内を照らしている。