JAXA(宇宙航空研究開発機構)が、2014年2月28日(AM3時7分からAM5時7分の間)に種子島宇宙センターから打ち上げる予定の「H-IIAロケット」23号機に積載される全球降水観測(GPM=Global Precipitation Measurement)計画の「GPM主衛星」を1月17日に公開しました。重量は3.75t、高さは6.5m、太陽電池パネルを広げた際の幅は13mもあり、公開された写真でもわかるようにかなり大きな人工衛星です。これを周回軌道まで打ち上げるのは簡単なことではありませんが、その役割を「H-IIAロケット」が担うことになります。
「GPM主衛星」は「国際宇宙ステーション(ISS=International Space Station)」とほぼ同じ高さである約407kmの高さで地球を回ります。「役割は雨の分析ですが、このような地球観測タイプの人工衛星は、高度約3万6000kmもの高さにある静止衛星と違って低高度軌道と呼ばれるかなり低い位置で活動します。人工衛星を打ち上げる場合、低い軌道であればあるほどロケットの負担は少なくて済むため、今回は「H-IIAロケット」の中でも固体ロケットブースターを2つ使用する「H2A202」と呼ばれるもっともシンプルなタイプを使用します。ちなみに「H2A202」の打ち上げ能力は以下のようになっています。
◯低高度軌道(約300km)=約10t
◯太陽同期軌道(約800km)=約3.8t(夏季)〜約4.4t(夏季以外)
◯静止軌道(約3万6000km)=約4t
◯重力圏脱出=約2.5t
「H-IIAロケット」は、下の方に付いている固体ロケットブースターを自由に組み替えて積載重量を増やすことができる柔軟な設計になっており、「H2A202」で打ち上げ能力が足りない場合には固体ロケットブースターを4つ使用するよりパワフルな「H2A204」というタイプも用意されています。今回は約407kmと低めの軌道なので「H2A202」の能力でも充分対応できます。ただ、月周回衛星「かぐや」や小惑星探査機「はやぶさ」を打ち上げた時のように地球の重力を脱出しなくてはならない場合には重量約2.5tまでが限界となり、あまり大きなものは積めません。しかし、2014年中に「H-IIAロケット」で打ち上げ予定となっている「はやぶさ2」の重量は約600kgと「GPM主衛星」よりも遥かに軽いので「H2A202」の能力範囲では納まりそうです。
ちにみに「国際宇宙ステーション」に荷物を送っている宇宙ステーション補給機「こうのとり(HTV=H-II Transfer Vehicle)」は、本体だけでも約10.5tもあり、これに補給品などを入れると最大で16.5tにもなってしまいます。サイズも全長9.8m、直径約4.4mと大きめで、人工衛星などを収納するフェアリングは「H-IIAロケット」で使用していた5S型では小さくて納まりません。そのため、HTV軌道(約200km〜300km)に対して16.5tの打ち上げ能力のあるより大型の「H-IIBロケット」を開発し、5S-H型という大きめのフェアリングを採用しています。
どうしてもロケットの打ち上げに注目が集まりがちですが、ロケットはあくまでも人工衛星や探査機を打ち上げるための道具です。大切なのは、人工衛星や探査機が集めた情報やサンプルの研究と活用であり、「GPM主衛星」は地球観測衛星の1つとして、地球全体の降水情報を毎日伝えてくれる重要な役割を担うことになります。