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天体観測ニュース

「アイソン彗星」再び!核が生き残っている可能性をNASAが新たに発表

米国時間で28日に太陽に最接近した後に核が確認できず、崩壊・消滅の可能性が伝えられていた「アイソン(ISON)彗星」ですが、その後29日に消滅したはずの姿が太陽&太陽圏観測衛星「SOHO(Solar and Heliospheric Observatory」で捉えられました。前回の発表で誰もが「アイソン彗星」の存在を諦めていただけにうれしい可能性が出てきました。

 

NASA(アメリカ航空宇宙局)の映像を見ると一度は線上の筋のようになって確認できなかった核が、29日に再び輝いているように見えます。しかし、これがある程度の大きさを持った核なのか、それとも破片の固まりなのか、まだはっきりとはわかっていません。まもなく、その分析が発表されると思いますが、ある程度の形を保った姿で私たちの前に現れてくれる可能性はまだゼロではないようです。

 

「SOHO」が捉えた11月28日23:30の画像には消滅したと思われた「アイソン彗星」の姿が再び捉えられています。29日には次第に太陽から遠ざかっていることがわかります。/提供 ESA/NASA/SOHO/GSFC

 

実は、2011年に太陽に接近した「ラブジョイ彗星(C/2011 W3 (Lovejoy))は、近日点距離が約83万kmまで近づくため消滅するものと思われていましたが、奇跡的に生き残って見事な尾を披露しました。ほとんどの彗星が太陽の重力に飲み込まれるか崩壊したり蒸発するのですが、「ラブジョイ彗星」は一瞬消滅したように見えながら再びその姿を現したのです。そして、大彗星へと進化しました。

 

彗星の核はそのほとんどが氷で構成されていますが、地球上で生成される氷とは違って、アモルファス氷(通常の氷はゆっくり冷却されるため結晶化するが真空で-263度まで冷却されると結晶化されない氷ができる)と呼ばれる特殊な構造の氷となります。この氷は、分子が規則正しく並んでいないため、通常の氷よりも1万倍も熱を伝導しにくい特徴を持っており、それが奇跡的に生き残ることができる要因の一つにもなっています。

 

現時点では「アイソン彗星」の正確な状況が判明していませんが、ラブジョイ彗星よりも大きな核を持ち(諸説あるがラブジョイ彗星は約500mでアイソン彗星は約5km)、しかも近日点距離が約190万kmとさらに遠かっただけに、もしかすると核がある程度残っている可能性があるかもしれません。何度も言うようですが、彗星は予測が当たりづらい天体です。これまでの「アイソン彗星」の報道の流れを見てもそれがよくわかります。

 

NHKでは先日の報道を受けて早々と12月4日に放送予定だった特集番組名を「遭遇!巨大彗星アイソン」から「宇宙生中継 彗星爆発 太陽系の謎」に変更し、旅行会社では観測ツアーの中止を検討したりと、世界中が消滅したのでは?の発表を受けて慌ただしかったのですが、まだ諦めるのは早いようです(もし奇跡的に核が残っていたらNHKは番組名を元に戻すのでしょうか?)。再々度がっかりする可能性もありますが、見守って行きましょう。

 

 

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