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望遠鏡導入計画

(1)機材を検討する

いよいよ近づいてきましたね。5月21日の金環日食。天体観測&撮影編集部としてもそろそろ本気で気合いを入れて行きたいと思います。

さて、昨年12月10日にあった皆既月食ですが、写真撮影ですとそれぞれは単なる欠けた月にしか見えないため、ビデオカメラで撮影しようと思っていたいのですが、なんと直前になってビデオカメラが録画できないことが発覚しました。電源も入るしテープも回っていたのですが、画像が真っ暗なんです。どうも内部の配線が基盤の一部が壊れている感じでした。まさか、そんなことになるとは予想していなかったものですから、慌てて一眼レフカメラの撮影に切り替えようとしたのですが、なんと70mmマクロしか自宅にレンズが残っていませんでした。ビデオで撮影するつもりでいたので後はすべて会社に持って行ったままでした。400mm望遠がない…泣きながら目視観測しました…最悪な一夜でした。

月の写真は以前にも紹介したように望遠レンズを使用すれば手持ち撮影でもかなりきれいに撮れます。もちろん、食の状態では暗くなるので踏ん張らないといけませんが、デジタル一眼レフカメラで感度を高めに設定すれば、わざわざ望遠鏡や三脚を用意しなくてもなんとか撮影できます。ましてや明るい状態なら、ISO400、F7.1、1/400ぐらいで撮影できてしまうので、400mm以上の望遠レンズを持っている方はぜひ挑戦してみてください。Wズームキットによく同梱されている200mmぐらいの望遠レンズでも撮影サイズは小さくはなりますが、それなりに撮れます。

35mm換算で400mmのレンズではこれぐらいの大きさで撮影できます。

ところが、月以外の天体、例えば、惑星や星雲はさすがに手持ちでの撮影は厳しくなります。やはり、三脚や望遠鏡が必要となります。特に星雲のような暗い天体は赤道儀と呼ばれる装置を使用して追尾していく必要があります。ところで、「追尾って何?」と思われている方もいるかと思います。空を見ていると太陽も月も星も東から西に向けて動いていますが、これは各天体が自ら動いているわけではなく、地球が自分で回転する自転運動によって動いているように見えているだけです(日周運動と言います)。日本では、北極星付近を中心に回転するわけですが、例えば、ただの三脚に望遠鏡の筒の部分を載せて星を見ていると、どんどん動いてしまうため、見ている範囲からあっという間にいなくなってしまいます。これを常に静止した状態で見るには、星の動きに合わせて望遠鏡を動かさなくてはいけません。天体に詳しくない人は、iPhoneの星座アプリを使用すると意味がわかってもらえると思います(下の図版は「星座表」(250円))。

iPhoneアプリの「星座表」。中央にある北極星付近を中心にして星が回転していることがわかる。このアプリは、GPSに対応しており、表示されている星や星団・星雲にタッチすると詳細な画面に切り替えることができる。

北極星付近が中心なので、望遠鏡もそこを軸にして回転させれば星を追って行ける(追尾する)わけですが、これを可能にする装置が望遠鏡です。望遠鏡は主に、鏡筒(星を見る装置)、架台(鏡筒を載せる装置)、三脚(鏡筒と架台を載せる装置)の3つで構成されています。それぞれさまざまな種類があって、用途に合わせて組み合わせて使います。望遠鏡と一口で言っても実はとても多彩な世界なんです。ですから、一般向けでも価格は数万円のものもあれば数百万円もするものもあり、選ぶのもたいへんです。

アマゾンの天体望遠鏡のカテゴリに行くとすさまじい量の製品が表示される。しかも鏡筒だけで100万円以上のものもありちょっとビビります。

皆既月食の失敗を教訓に万全を期して、金環日食に向けて個人の望遠鏡を新しく追加することにしました。もともと望遠鏡は所有しているのですが、残念ながら古いモデルばかりです。当時はそれなりに高価なものでしたので、日食撮影にも十分使えますが、最近のモデルのように自動で星を探したり、コントローラで操作するといったことはできません。デジタル一眼レフカメラは何台も持っているので、これを手軽に活用できる環境が欲しくなりました。

そこで、一大イベントである金環日食を口実に望遠鏡を買ってしまおうというわけです。しかし、この不況ですので予算は非常に限られているため、高価なモデルは購入できません。でも、暗い天体も観測したり撮影したいとなればそれなりの機能が必要です。そこで、なるべく低予算で可能な限り目的を果たしてくれる望遠鏡を探すことにしました。これから購入するつもりなので、その体験記を書いていきたいと思います。ただ、自腹なのでお金は本当にありません。少々せこい話も多くなるかと思いますがご了承ください。

次回は、望遠鏡のメーカーについて紹介します。

ところで、「金環日食観測ガイド ~安全に観測できる日食メガネ付き~」の電子版が発売になりました。1-3個まで自由に日食メガネの個数を選ぶことができるお得なセットをご用意しております。5月8日までの限定販売となっております。詳細は下記バナーをクリックして「商品詳細」でご確認ください。

 

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〈連載目次〉

「望遠鏡導入計画 - 1 金環日食に向けて機材を検討する」
「望遠鏡導入計画 - 2 メーカーはやはりタカハシか?」
「望遠鏡導入計画 - 3 どのタイプの望遠鏡を選ぶか:基礎編」
「望遠鏡導入計画 - 4 どのタイプの望遠鏡を選ぶか:鏡筒編」
「望遠鏡導入計画 - 5 どのタイプの望遠鏡を選ぶか:架台の種類編」
「望遠鏡導入計画 - 6 どのタイプの望遠鏡を選ぶか:経緯台編」
「望遠鏡導入計画 - 7 どのタイプの望遠鏡を選ぶか:赤道儀・三脚編」
「望遠鏡導入計画 - 8 購入条件に合う天体望遠鏡を探す」
「望遠鏡導入計画 - 9 天体望遠鏡はこれに決定!」
「望遠鏡導入計画 - 10スカイポッドVMC110Lを組み立てる」
「望遠鏡導入計画 - 11スカイポッドVMC110Lの設定と調整」
「望遠鏡導入計画 - 12スカイポッドVMC110Lのアライメント準備」
「望遠鏡導入計画 - 13スカイポッドVMC110Lのアライメントを行なう」
「望遠鏡導入計画 - 14危険が伴う太陽撮影!NDフィルタも注意が必要」
「望遠鏡導入計画 - 15日食撮影用のフィルタを用意する」
「まさに神秘の天文現象 ? 2012年5月21日の金環日食」
「金環日食のクライマックスを13秒のビデオで」

『望遠鏡導入計画』の記事一覧はこちら

著者プロフィール

マイナビ出版 天体観測&撮影編集部(出版社)
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