この週末は皆既月食でロマンスな一夜を


今週はいよいよ皆既月食ですね。皆さん覚えていますか? しかも土曜日の12月10日の20時31分から開始ですから、平日は働いている方も観察にはバッチリの条件です。一晩で満ち欠けの変化見ることができる皆既月食をぜひ堪能してもらいたいものです。

 

月食の写真ではありませんが、デジタル一眼レフで手持ちで撮影した画像をトリミングしたものです。カメラの露出さえ決めることができれば、驚くほど簡単に撮影することができます。

 

皆既月食の終わりは11日の2時31分ということですから、最初から最後まで見ていると7時間も楽しめることになるのですが、かなり寒くなってきましたので、風をひかないようにお気をつけ下さい。

 

さて、気になる当日の天気ですが、現在時点での週間予報を見ると新潟のほうは雪もしくは雨のようですが、その他は晴れか曇りのようです。長時間におよぶ観察なので多少曇っていてもどこかのタイミングで月を見るチャンスはあるかもしれませんが、日食と大きく異なるのは最初から最後までずっと見続けていないと皆既月食だということがわからない点です。

なぜなら、日食は太陽の前を月が横切るため、2時間半ほどで太陽が欠けたり見えなくなったりというわかりやすさと、何よりも太陽が欠けるなんてことは滅多にないため「日食だ!」と感動できるのですが、月は日頃からどこか欠けているのが普通です。満月は月に1度ぐらいしかありません。おわかりですか。つまり皆既月食は、ちょこっとだけ見ただけではタダの欠けた月なんです(色はかなり多彩ですが)。7時間に渡って最初から最後まで観察するからこそ、その変化を知ることができる天文現象なのです。これを理解しておきましょう。

 

ところで、せっかくのイベントですから、記念に月を撮影しておきたいものですが、ベストなのは静止画よりも動画です。ビデオカメラで7時間連続撮影して後で早回しで見るとかなりの感動に浸ることができます。7時間連続で撮影する機材をどうするかという悩みもありますが、問題なのは月はどんどん動いて行きますので、これを追っていかなくてはならないことです。三脚で固定して撮影するというわけにはいきません。

 

簡単な方法は、赤道儀と呼ばれる装置を搭載した天体望遠鏡を購入して、そこにビデオカメラを載せるやり方ですが、赤道儀タイプのものは価格が高く、容易に買うことができません。しかし、手持ちで撮り続けるのは辛いというか不可能ですよね。そこでビクセンという光学機器メーカーから「星空雲台 ポラリエ」(4万9350円)と呼ばれる製品が11月30日から発売になっていまして、これを使ってみたらどうかなと思います。見た目は少し大きめのコンパクトデジタルカメラなのですが、実はちゃんとした赤道儀なんです。星だけでなく、月や太陽も追って行くモードを搭載しており、カメラ用の三脚に取り付けて、ビデオカメラやデジタルカメラを載せると簡単に追って行くことができます。

 

ビクセンのホームページにポラリエの詳細が掲載されています。

 

赤道儀はその特性から、どうしても星の回転する中心(北極星の方向)と赤道儀の回転する中心を合わせる「極軸合わせ」という作業が必須となりますが、ポラリエは素通しの穴を使って簡易的に合わせることができます。さらに別売の極軸望遠鏡(1万7850円)も取り付けることが可能で本格的な調整もできます。これを使えば、かなり撮影は楽になると思います。

 

ところで、赤道儀は買えないけどデジタル一眼レフカメラを持っているという方は、静止画撮影に挑戦してみてはいかがでしょうか。一夜で月の満ち欠けを撮る機会は滅多にありませんし、撮影した画像を後で連続再生すると動画でも見ているかのように感動に浸れます。しかもデジタル一眼レフカメラの静止画撮影なら、かなり簡単に撮影できるというメリットもあります。

 

フィルムカメラの頃は感度が低く(ISO100とか)、しかも望遠レンズはそれなりに高価だったため、望遠鏡に直接カメラを装着して撮ることが多かったのですが、最近のデジタル一眼レフカメラは、ISO6400ぐらいは普通に対応しており、しかもかなり安い望遠レンズも登場しています。感度はISO400もあれば400mmぐらいの望遠レンズでも早い速度でシャッターを切ることができるので、手ブレ補正機能が使える環境であれば、手持ちでも問題なく撮影できます。サンプルの月の写真は、400mmのレンズを取り付けて、ISO400、F7.1、1/400で手持ちで撮影したものです。画面全体では小さく写ってはいますが、拡大すると一番最初の写真のように大きめのクレーターなら確認できます。よく本体とセットで販売されている200mmぐらいの望遠レンズでもパソコンに読み込んで拡大すれば見られなくもないので、この機会にぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか?

 

こちらは最初の写真のオリジナルです。400mmの望遠レンズだとこのぐらいのサイズになりますが、拡大するとそれなりに写っていることがわかります。

 

ただし、月は満ちている時と欠けている時では明るさがかなり違います。オート露出で撮影すると真っ暗になったり、逆に明るくなり過ぎる可能性があります。しかも適正露出が必ずしも良いというわけでもなく、皆既中の月をどう雰囲気を保ちながら撮るかも課題です。全体を通して後で動画的に見るのであれば、もっとも明るい状態で適正に写る値を探し出し、マニュアルモードでその値に固定して通して撮影するという方法もあります。ただし、1カット1枚ではなく保険として露出を前後にずらして3枚ぐらいずつ撮影しておきましょう。そうすれば、多少何か問題が発生してもカバーできる可能性が高くなりますし、カットカットで雰囲気の出ている写真も同時に手に入れることができます。とにかく、当日までに普通の月を撮影して練習しておくことが大切だと思います。

 

国立天文台のホームページに今週の皆既月食の詳細が掲載されていますのでご覧ください。

 

では皆さま、良い一夜をお過ごしください。

カテゴリ: 月食, 編集部から
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