勝浦修名局集 明日発売



明日24日(水)は名局集シリーズ第7弾「勝浦修名局集」の発売日です。
カミソリ流の名局100局を勝浦九段らしい洒脱な言葉で振り返っており、対局を並べながら、当時の将棋界の空気も味わえる一冊です。

ここでは、勝浦九段の思いが伝わってくるまえがきをご紹介いたします。

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 升田、大山、中原とビッグネームが並ぶ「名局シリーズ」。私に声がかかるとは思ってもなく、正直とまどいがあった。自分でいいのか、百局とは選ぶだけでも大変だ。不安がよぎり、すぐには返事ができなかった。
 そんな私の背中を、長年お世話になっている編集者氏が押してくれた。「大変な作業になります。しかし意義ある仕事です」と。
 棋士に残せるものは所詮は棋譜だけである。勝浦修という棋士がいて、こんな将棋を指した。これを立派な書籍で残せるものなら、こんな幸せはない。おこがましいか、との思いは今なお消えないが、お言葉に甘えてお引き受けすることにした。
 郷里紋別を離れ、札幌での内弟子修業。中学生でのアマ名人戦の代表。奨励会入りから、長い棋士生活。思い起こせばさすがに感慨無量である。
 幸運に恵まれた人生であった。脱稿した今、改めて編集者氏の言葉をかみ締めている。

 名局とは名ばかりで、我ながらうまく指せたかなという将棋が10局あるかどうか。完勝が好局とも思わないので、本書は疑問手、悪手ありの熱戦集である。苦戦はもとより敗局もある。その意味では思い出集である。
 40数年に及ぶ現役生活。デビュー緒戦に負け、2戦目の対中原戦にも完敗した。焦ったわけではないけれど、3戦目の関屋先生に粘りまくって初勝利を挙げたときには、ほっとしたのも事実。この2局も入っている。
 初優勝、タイトルに挑戦、もちろんAクラス入りも嬉しい思い出だ。また奨励会時代の恥ずかしい話も正直にコラムに書いた。棋士生活の全てが詰まった思い出集といえようか。こんな棋士がいたのかと笑われるかもしれないが、全て私の人生である。

 百局に不安を覚えた私であったが、終わってみると若い人との対局をもっと載せたかったと残念な気持ちが残ってしまった。どうしてもかつてのライバルたち、目標だった人たちが多くなってしまったが、やむを得ないかと思う。
 自戦記編は途中図を多用し、なるべく目で追えるように心がけたつもりである。解説編はともかく、こちらの方は難しく考えず楽しんでいただきたい。それでもいくらかは棋力向上の糧となるといささかの自負もある。

 郷里を旅立ち55年が過ぎた。とうに還暦を過ぎ、昔よりは分別をわきまえるようにはなったが、果たして人間としてどれだけ成長したものやら。まえがきは短めのつもりだったが、ついつい長くなってしまった。苦い笑いとともに筆を置くことにしよう。

       平成二十五年 春  棋士 勝浦 修

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