【新連載その2】ミステリーは新書の中に1


こんにちは。3号です。

もうひとつ、連載をスタートします。

その名も「ミステリーは新書の中に」。

まあ、あれですわ、小説風に新書を紹介することで、

読者をひきつけようという、浅はかな企画ですわ。。。

ミステリーかなんか、知らへんけど、

九州人のわいには関係あらへんわ。。。

(なぜ九州人が関西弁もどきをしゃべる・・・)

★★★

あ、ちなみに、この小説内の登場人物および、

特定の団体・商品名は一部を除いて基本的に架空のものです。

それでは、物語をお楽しみください

★★★

皇居に面した見晴らしの良い窓際で、編集3号はネットサーフィンをしていた。

ブラウザの中には次から次へと検索結果が表示される。

「またさぼってんですか?」

3号は反射的にブラウザを閉じる。

「な、なんだ中山かよ。。。おどかすなよ。編集長かと思ったぜ」

「ああ、安心してください。編集長ならとっくの昔から、先輩がさぼっているのは気づいてますから」

20代後半になって、新卒当初の軽さが抜けてきた中山誠一は、あきれた口調で3号に言い放った。

「おまえ、よく先輩に向かってそんな手厳しいこと宣言できるなぁ」

3号がその言葉を言い終わらないうちに、中山は「事実は事実です」と言葉をかぶせた。

「で、なんか用か?」

中山は新卒当初から「言いたいことを堂々と言う」タイプの編集者で、老若男女、先輩・後輩、ひいては上司・部下の関係なく、自分の仕事をすすめてきた。一般の会社だったらどうなったかわからないが、個性派ぞろいの編集部において、そのキャラはキャラで許容の範囲のようだ。

もっとも、中山も新卒当初はその厚かましさから、いろいろと問題ばかり起こしていた。特に当時の社長につかかっていったある事件では、なぜか編集3号も巻き添えをくらい、問題解決に奔走するはめになった。

それ以来、中山は恩義を感じたのかどうかは不明だが、やたらと編集3号を頼りにするようになった。

「社内随一の暇人の先輩に折り入って頼みがあるんです」

編集3号は30代なかばのいわゆる働き世代だ。本人的にはバリバリに仕事をこなしているつもりだが、どうも情報収集のためのネットサーフィンがさぼっているように見えるらしい。まあ、事実、8割は趣味に関する情報収集だが。。。

「先輩、この本知ってますよね?」

中山が差し出した新書サイズの書籍を編集3号は面倒くさそうに眺めた。

そのカバーには「官僚に学ぶ仕事術」というタイトルが記されている。

「それ、俺が担当したやつじゃん」

3号の言葉に中山はまたかぶせ気味に言葉を早口に発した。

「この本をいたく気に入った先生がいるんですよ。で、ぜひ、それを担当した編集者に会わせてほしいと懇願されちゃったんです」

「別に会うのはどうってことないけど、なんでお前はそんなにすまなそうな顔してるんだ?」

中山の懇願するような口調に、3号は警戒心丸出しで問いかける。

「先輩! いま、会うって言いましたね!!」

「あぁ、言ったが、言葉は正確に理解しろ! 俺は『会うのはどうってことない』と言っただけで、『会ってもいいぞ』とは言ってない」

「先輩なら、必ず会ってくれると思ってました。じゃ、これ住所ですから、訪ねてください」

中山は3号の言葉に耳をかさず、自分の用件だけを一方的に伝えて、さっさとその場をあとにした。

「お、おい!」

いつものこととはいえ、また強引に何かを押しつけられたようだ。3号は右手に握らされた紙を開く。

「げ、これ福岡じゃん。おい、中山!」

3号はそそくさと編集部から出て行こうとしている中山に向かってどなった。

「交通費はどうなるんだよ!」

「とりあえず、先輩が立て替えといてください。先方に気に入られれば、出してくれるかもしれませんよ。じゃ、僕、取材があるんで」

中山はバーンっと勢いよくドアを開けて、さっそうと編集部を飛び出していった。

「おまえ、立て替えとけって言っても、福岡までいくらかかると思ってんだよ……」

★★★

つづく

★★★

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