アムステルダム(管啓次郎)
1 水路が扇のように風を生む北の港町だ 路上を埋めつくすかもめたちをかわしながら歩く こんな冬の底で夏の夜のひまわりを思えば 黄色い野原が目の前によみがえる 自分の耳を切ったあの男はどんな黄色を見ていたのか おれは知らな.....
幻書の街から(石田瑞穂)
その街の本屋という本屋 書架という書架におさまった 本は、ページがなくて背表紙しかない。 箔押しのタイトルがしめすのは ある一筋の忘却のかたち。 ここにいるのはみんな幽霊 春雷や野芹とおなじ存在、 「言葉、言葉、言葉」と.....
妙蓮寺、弁財Temple(暁方ミセイ)
さても妙なる 青じゃ、青じゃ、と声のするほう 駅を出るとゆるいくだり坂は商店街に続き、それは黄色い電球も寒さに湿っているような いつだって年の瀬みたいにそそくさとした、 果物屋と衣料品店ばかり.....