それでも川は流れている


 

激しい雨、

激しい雨が、雷鳴とともに近づいてくる

「極地的な豪雨」と散文的に語られる、

地表を破砕する意志のような

激しい雨が

 

紫電が大地を撃つ

その轟音のあとで異様な振動が続いた

あれは、裂けた樹々が倒れる音か

 

夏の空が気まぐれになった時代には

心も千千に乱れていく

名前まで裂けたとしたら

君は何と名のるのだろう?

見慣れた街、

何百、何千もの電柱が濡れている

冷たい炎のように

 

渇川を渡る橋が落ちたが

気にする人はいない

かつては、その森の奥に湖があった

水没した村が湖底には眠っている

今、空は裂けた名前の欠片が渦巻いて

あまりに暗い

無量光院跡。

残るのは庭園ばかりで

光は失われたままだ

きっと、太平洋を隔てた大陸の中央部では

竜巻が発生している

人も馬も空に呑まれ。

人も馬も。

 

2014.7.28

 

カテゴリ: 誰でも明日のことは考える(城戸朱理)
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