占い師


 

水はなく、風があり、渦を巻いている、ふねは風の渦のまんなかを通っていく、予言されたとおりに航海している、遠くに旗をもつ青い帽子の人が立つ、水はないのに波があり、ふねに接触するたび火花が散る、時間が火花をとばす、渦に触れたとたんに消えるだろう、心配はいらない、おまえたちは安全である、おまえたちはこの国そのものであるこのふねと、おまえたち自身を、しっかりと維持できる、なぜならおまえたちには

 

があるからだ。

 

雨のように何かが降ってくる

降ってくるものだ

降らせるものではない

降らせるものはいない、

想定外の

 

爆音。

押しつぶされるぶあつい光、

生きている管がしめつけられる音、

ほそいところから絞り出される空気の

裏返しに吐きだされる

音、

そして無音になる。

 

ひとりの幽霊もおしゃべりをしない

ながい

ながい

無音。

 

 

2014.7.18

カテゴリ: やねとふね(河野聡子)
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