TiP!のズッコケ交換日記③ 100years for 2hours(橘上)


 

5月21日(水)

11時に起きて映画を見る。傑作だが「いっぷく!」の方がおもしろい。7年ほど前に「100円だから」という理由と「聞いたことあるタイトルだから」という理由で買いためたVHSの束をかたそうとするがかえって散らかってしまう。タダ券があるという理由で渋谷の美術館にいく。到着が遅れ着いたのは閉館30分前駆け足での鑑賞。楽しんでみる分にはこれぐらいの方がいいかもしれない。待ち合わせに十分遅れる。(T)

 

5月21日(水)

土の埋めたスマホからタイマー機能でメールを送ったらしい人が同年生まれと知って、Sくんのことを思い出す。男の子の首を切断して校門に置いた彼はいまどこでどうしているのだろう。かつては私も、ユニークな犯罪のやり方をあれこれ構想したものだった。誰も死ななくてよかったね。(Y)

 

5月21日(西暦2060年)

ちょうど100年前の明日、大地震がやって来る。我々はそのことを前もって教えるために100年前の今日へと今から向かう。目的地はサンティアゴ。その後ハワイ島を経て、翌日には100年前の明後日、津波に襲われる日本の三陸地方へと。前例のないことで、成功したとして我々の現在にどんな影響が現れるのか不明。そもそも100年前のチリに辿り着く前に我々は時空圧に潰されてマシーン共々ただの塵になるかもしれない。(K)

 

 

スマホからタイマー機能で送られたメールが届く

「10分遅れます」

今から100年と10分前にセットされたことばが届き

僕は皮肉を言い忘れる

この間に大きな地震がいたるところで起きていて

「大地震」と言われてもどれが大地震かわからない。

この間に切断されて校門に置かれた首はたくさんあるので

犯人と言われてもどの彼かはわからない

Sくんと言われたらあのSくんに決まっているのだけど

今から百年後

積み上がったVHSの束が崩れ津波のように襲い掛かかる

遅れてやってきた津波は遅れてやってきた人々を飲み込む

再生する機器と機会を失った映像は、生きていても

時空圧に潰されてマシーン共々ただの塵になるしかない

誰も死ななくてよかったね。

よかった。11時の映画に間に合って。

チリもハワイも三陸もサンティアゴもまだまだ再生可能だよ

今日の映画に間に合わなくても

明日になれば11時はまたやってくる

僕はこの100年を30分間で生きる

100年を100年かけて生きるより、こっちの方がおもしろい

映画にしては短すぎるかな

この100年は2時間に満たない

次の100年をかけてこの100年を映画化する

だからこの100年を駆け足で生きた私の30分間は

長過ぎる予告編と思ってくれてかまわない

 

 

2014.5.28

 

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