舞い上がれ、5


 

 

あれは たしか

転校生だったころ。

新品のかばんに

新品の海をなみなみ注いで

教室からながめていたのだ

 

だされた宿題は

――この宇宙に名前をつけよ

先生の苗字は覚えていない

 

 

単元が遅れていたんだ、恥ずかしい 彼は木星みたいに笑う

しろいくつ海に落としたと嘘をつく ブラックホールみたいに好きで

 

 

ブラックホールみたいに好きだ

現在進行形で舟はすすんだ

上弦と下弦の区別はつかない

 

たからものの日々です

彼あなたわたし彼女きみが

家族になりうる四月のおわりに

黒板消しが指紋になじんで

――傷ふさぐ絆創膏

 

 

きみとわたしのベッドのしたに眠りたる×××、水浸しのまま笑う

お皿抱いてキッチンにいる 箱舟を出航させないように何度も

 

 

2014.5.1

 

カテゴリ: 気管支たち/野口あや子+三角みづ紀
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