なまこサバイバル(4)


(サヤのほうへ)

 

血の色をした電車に乗って

私たちはすすむ

サヤ

と呼ばれる方へ

 

青あらしの日

血の色をした電車に乗って

ナゴヤ

サヤ

あるいは西へ

電車のかたちをした静脈のなかを

誰かとてつもなく巨きな人の

揺れる静脈のなかを

 

なぜならすべては西にある

浄土も

ヘスペリデスの陽も

 

ナゴヤ

サヤ

さや? ささのはは

みやまもさやに?

あるいは鞘? 佐屋街道?

 

途中

とある詩人の生地を過ぎる

「おっとせいのきらひなおっとせい」として

「むかうむき」で生きた

ミツハル・カネコ

 

知恵と勇気を

この詩人からもらい受けながら

私たちはすすむ

青あらしの日

電車のかたちをした

誰かさんの巨きな揺れる静脈のなかを

 

なぜなら私たちにもまた

還りつくところがある

きっとある

あるいはすべては西へと没し去る

きらりと一瞬

跳ぶ魚の腹のような

極上の秘密をみせて

サヤ

さやの方へと

 

青あらしの日

血の色をした電車に乗って

私たちはすすむ

 

 

2014.2.7

 

カテゴリ: シーズン1, 野村喜和夫
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