第1話「アスタコNEO、大地に立つ」より続く
発売まであと5日となった書籍『超重機アスタコ』。
今回は、書籍に掲載されているフォトグラフスコーナーの写真を撮影に行った取材時、実際にアスタコNEOを運転させてもらった時のエピソードをご紹介します。
「アスタコNEOに乗ってみた!」レポート記事は、「アスタコNEOフォトグラフス」の写真解説文を担当したライター、岩岡としえ氏が本書でも掲載しています(本書P34)。そこでこのブログでは、本書の企画&構成担当者による、少し違う視点の記事をお送りしましょう。
日立建機さんの敷地内で、いくつかの重機と共に停車してあるアスタコNEO。でも、その姿は明らかに他の重機たちとは異なるオーラを発していました。
取材に同行して下さった技術者の小俣貴之さん(本書46ページ~)がアスタコNEOのエンジンを起動すると、聞こえてくるのは「どこかで聞いたことがある」普通の油圧ショベルのエンジン音。でも、重機は遠くから眺めたことはあっても近寄ることはありませんし、ましてや乗り込む経験などありませんでした。それこそ、これまで「他人事」だった音…大音響から伝わってくる強大なパワーを自分が操作することになるのかと考えると、緊張で手が震えてしまいました。
そう、音といえばもう一つ。我々取材陣が乗り込む前に小俣さんのデモンストレーションがあったのですが、腕や手先のアタッチメントを動かす度に、「カキィーン! カキィーン!」といった、重そうな金属同士が軽く接触するような音が響いていたのも印象的です。
そして、ヘルメットを被っていざ搭乗。コクピットに座る横にアスタコNEOの設計担当者である小俣さんが立ち、直々に操作方法をレクチャー。とはいえ、本書P28~29に掲載しているコクピット解説ページを読めばわかるように、アスタコNEOの操作方法は直感的でわかりやすく、3分も説明を受ければあっという間に動かせるようになりました。
「これが緊急停止スイッチです。もしもアスタコNEOが暴走した時には、このボタンを押して止めます」という小俣さんの一言に、「暴走…ヱヴァンゲリヲンみたいだな…」と、妄想を膨らませる僕。
そして、操縦。目の前にあるスクラップを手腕で固定し、副腕のカッターで斬る。恐る恐る操作しているせいで、アームの動きは細切れ。その都度、ガクンガクンと機体が揺れる。そして「パキィーン!」と高い音を立てて真っ二つになる鉄塊。
人間の手では、どう頑張っても曲げることすら難しい鉄塊を、まさに指先一つ…ちょっとした操作で、いとも簡単に切り裂いたアスタコNEO。正直なところ、そのパワーを目の当たりにし、「操作ミスは許されない。責任重大だ…」と、軽い恐怖を覚えたのも確かです。
一つの操作ミスもなく、アスタコを下りた僕。たかが3分のレクチャーで、あそこまでの作業ができたということは、それだけアスタコNEOの操作系が洗練された、直感的なものだということなのでしょう。
そうして落ち着いた頃、小俣さんが再びアスタコNEOに乗り込み、降着ポーズ…もとい、輸送用に腕を折りたたむ姿勢を取らせるのを見ていた取材陣。 と、その時…
「 ズ ン ! 」
地面が揺れました。アスタコNEOの腕が地面に着いただけなのですが、その衝撃で、取材陣が立っていた場所が少しだけ縦に揺れたのです。
「スコープドッグみたいなロボットが目の前にいたら、こんな感じなのかな?」取材陣はそんな充実感を感じ、にやけたまま午後の取材を始めたのでした。
次回「あんたアスタコの何なのさ」 Not justice, I want to get truth. 真実は見えるか?