長野県のほぼ中央に位置する松本市は、松本城の城下町として栄えてきました。人口は2013年5月時点で約24万3000人で、県庁所在地である長野市の38万5000人に次ぐ大きな市です。すぐ近くには塩尻市や安曇野市が隣接しており、西側には北アルプスや中央アルプス、東側には美ヶ原があります。若干開けている北側も1000mクラスの山がいくつもあって、南側に隣接している岡谷市との間には標高1300mの霧訪山などがあるため、周囲を360度ぐるりと見渡しても山しか見えない風景は、平野に住む方には不思議に感じるかもしれません。
松本市は、松本城や市役所のある松本地区に加えて、最近合併された、旧四賀村、旧波田町、旧梓川村、旧奈川村、旧安曇村によって構成されています。これら旧町村は、当然ながら野菜の栽培が盛んで、減塩ごはんの重要な食材を供給している一大農業地帯でもあります。前回は隣接している村での春の野菜作りについてご紹介したので、今回は市街地を少しご紹介しましょう。
松本駅は、JR東日本の篠ノ井線と大糸線、そしてアルピコ交通(旧松本電気鉄道)という私鉄が乗り入れしています。所属線は篠ノ井線になり、5駅手前の塩尻駅が中央本線の駅のようですが、中央本線の駅一覧の最終駅は松本駅になっています。アルピコ交通は、上高地線という松本駅から新島々駅の路線を運営しています。1983年まではより上高地に近い島々駅という駅が終点駅だったのですが、台風の被害で線路が埋まってしまい、その後廃線になっています。電車は2両編成で、無人駅も多いのんびりとした路線です。
松本駅から20分ほど歩くと国宝松本城が見えてきます。「日本には、多数のお城がありますが、なんで松本城は国宝なの?」と思われる方も多いかもしれませんが、この城はかなり特別な存在です。現在、昔からの天守閣がそのまま残っているのは12城しかありません。例えば「大阪城」や「名古屋城」「熊本城」は外観は立派な天守閣ですが、実は再建されたもので鉄筋コンクリート製です。日本の城は、石垣や堀などはかなり残っていますが、ほとんどの天守閣は再建されたもので、12城しか昔のものは残っていないのです。その中でも「松本城」「犬山城」「彦根城」「姫路城」の天守閣は国宝に、残りの8城は重要文化財に指定されているたいへん貴重な物です。
江戸時代以前に建造された城は山城が多いのですが、松本城は12城の中で唯一の平城で、松本駅から坂を上ることなく、大名町通りを歩いて行くと突然ビルの間からその姿を現します。最初に黒門が出迎え、そのすぐ左に月見櫓と天守が見えてきます。有料にはなりますが、太鼓門から中に入ると城の正面が見え、月見櫓と天守、そしてその右に乾小天守を確認することができます。世界遺産に指定されている姫路城のスケールには及びませんが、現存する最古の五重六階の木造天守であり、これだけしっかりと連結複合式天守がそのまま残っているからこそ国宝に指定されているのでしょう。
城の内部は当然ながら木造の急な階段を昇らなければなりません。戦の際に簡単には昇られないような構造になっていますので、かなりたいへんですが、他ではなかなか体験できない本物の城の内部を堪能することができます。

左側面から見ると風がなく堀の水量が多い時には城の見事な姿が写り込むことがあります。あまり暑くなると水が濁り出すので、このようやカットを撮影するのは春ぐらいがいいですね。この写真はゴールデンウィーク中のものです
ゴールデンウィーク中は北アルプスがまだかなり雪に覆われていましたが、松本城周辺は晴れていると信じられないぐらい暑くなります。冒頭の写真のような雪山と真夏日のような松本城の組み合わせは、厳しい自然の減塩ごはんの里ならではのとても見応えのある風景となります。