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熱中症ミニ知識(5)- 温度系&湿度計の正しい使い方を覚えておこう

「見守りっち」は、熱中症にならないように10分ごとに計測して、危険な状況になったらLEDの表示やブザーで知らせてくれる「見守り」機能を備えています。

「携帯型熱中指標計「見守りっち」付き熱中症対策ガイド」に付属している日本気象協会監修の熱中指標計「見守りっち」は、気温と湿度を測定して、その値からWBGTの近似値を算出するというものです。

熱中症にならないように10分ごとに計測して、危険な状況になったらLEDの表示やブザーで知らせてくれる「見守り」機能を備えています。

もちろん「見守りっち」でなくても気温と湿度を測定できる装置があれば、ヒートインデックスなどと照らし合わせて熱中症への対策を取ることはできます。しかし、室内であれば多少大きな温湿度計でも問題はないのですが、外出した先でいちいち温湿度計を取り出して数値をチェックして、表と付け合わせるのは自分の経験から考えても大変な作業です。

10分間隔で自動で測定してWBGT近似値を算出し、熱中症の危険性をLEDとブザーで知らせてくれるのが「見守りっち」の特徴です。

今回、編集部で「見守りっち」を付属させていただいた理由には、「誰でも簡単に扱うことができる」「10分間隔で自動で熱中症の危険性を知らせてくれる」「小型なので容易に持ち歩くことができる」という特徴を備えているからです。

実際に使用されるとわかるのですが、熱中症の危険性を自分からチェックするのと自動で知らせてくれるのでは使い勝手が大きく違います。また、子どもやお年寄りに複雑な操作や確認を強いるのは現実的ではありません。幅広い年齢層に使っていただくためには、持たせておくだけで危険性を知らせてくれる機能は理想的だと言えます。

また、編集部でも実際に「見守りっち」を使用していますが、今まで知りたくてもわからなかった温度と湿度が、ボタンを1回押すだけで表示されるので、頻繁にチェックするようになりました。これは、カバンにぶら下げて持ち歩けるサイズの温湿度計でなければ不可能なことです。

さて、便利な「見守りっち」ですが、使用する際にはいくつか注意しなくてはならないことがあります。以下にまとめましたが、これは「見守りっち」に限らず、一般的な温湿度計や高機能なポケット気象計(風速や露点、気圧、体感温度などが測定できる)にも言えることです。機能や精度、価格と関係なく、温度や湿度を測定する装置であればどれも同じです。

◯安定した測定値を得るためには周囲の環境に一定時間馴染ませる
◯風がある場合とない場合では馴染む時間に差が生じる
◯手で握りしめた状態で測定すると体温や汗の気化によって誤差が生じる
◯個体差があり同じ製品でも多少のズレが生じてしまう

では、一つずつ説明して行きましょう。

安定した測定値を得るためには周囲の環境に一定時間馴染ませる

現在市販されている低価格の温湿度計は、多かれ少なかれどうしてもタイムラグが発生してしまいます。理由は、急激な環境の変化に馴染むのに時間がかかることと、リアルタイムではなく一定の間隔で測定しているためです。

例えば、暑い屋外からエアコンを使用している涼しい部屋に移動した時には、温湿度計のケースとセンサが冷えたままなのですぐには正しい値にはなりません。ケースが周囲と同じ温度になるまで待つ必要あります。カバンやポケットから取り出した時や車・電車を乗り降りした際にも同様のことが起きます。

そのため、デジタル式の温湿度計はリアルタイムに測定してもあまり意味がないので一定の間隔で測定するようになっている製品がほとんどです。

例えば、壁掛け時計や置き時計に内蔵されているタイプは、数分の間隔で測定するように設定されています。つまり、見るタイミングによっては2分間待たないと温湿度の値が更新されません。

ケストレルのようなポケット気象計は、センサを外部に露出させているので周囲に馴染みやすく、さらにほぼリアルタイムに数値を読み取ることができます。

「見守りっち」の測定間隔は10分と長めですが、時計内蔵タイプと違って下部にある「ON」ボタンを押すと手動で測定できるため更新されるまで待つ必要はありません。しかし、センサがケース内に内蔵されているため、急激に環境が変化した場合には、実際の数値が表示されるまでどうしてもタイムラグが生じてしまいます。では、このタイムラグを解決する方法を次に紹介しましょう。

ポケット気象計のケストレル3500。温度、湿度に加えて、風速、ヒートストレス指数、体感温度、露点などをほぼリアルタイムに測定することができます。写真は、ウェザーリポートの有料サービスで2000ポイント溜めるとウェザーニューズ社から送られてくる特別仕様品で「weathernews」のロゴが入っています。持ち運びに最適な専用ケースが付属しています。3500のオリジナルは、1万8380円です。

混合比や気圧、高度なども測定できる高機能版のケストレル4200。3600セットものデータログ保存機能も備えており、単体でグラフ表示が可能です。また、オプションを使用してパソコンにデータを送ることもできます。2万6000円です。
風がある場合とない場合では馴染む時間に差が生じる

温湿度計が早く周囲に馴染むかどうかの鍵は風が握っています。風のある空間のほうが早く正しい値を表示することができるのです。これは、風がケースやセンサに当たることによって、測定場所の温湿度に早く近づくからです。

例えば、温湿度計が太陽の光にさらされて高温になっていたとします。エアコンを使用した部屋に入ると当然温度の値が下がり始めますが、風がまったくないとケースやセンサの周囲の空気が入れ替わらないためになかなか部屋の温度まで下がりません。

逆に風があると早く冷やされるのでタイムラグが縮まります。試しに暑い場所に置いておいた温湿度計を室内に入れて扇風機の風を当てた場合と当てない場合で比較してみてください。扇風機の風を当てたほうが早く正しい値を表示するはずです。

「見守りっち」も風が吹いている環境なら馴染むのに1分もかかりません。逆に風がないと10分以上かかることもあります。温湿度計の表示を早く正しい値にしたい場合には、扇風機の風を当てたり、団扇で扇いだり、あるいは手で振ってケース内に周囲の空気を入れるとよいでしょう。

また、風がある場合とない場合では、測定する場所によって数値に大きな開きがあります。窓やドアを締め切った室内は、天井には暖かい空気が溜まりやすく、床には冷たい空気が溜まりやすいのは皆さんご存知だと思いますが、太陽光や輻射熱が入りやすい窓に近かったり、大型の液晶テレビや冷蔵庫、ガスコンロに近い場所は風がない局地的に温度が高くなります。

そのため、温湿時計を設置する場所によって測定値が大きく異なってきます。エアコンの直下に置くと低い値になりますし、窓際やテレビの近くでは高い値になります。部屋の中とはいえ、基本的には自分が居る位置の温湿度を測定することが大切なのですが、温湿度計内蔵の時計ではいちいと移動して測定するのは面倒です。

その点、「見守りっち」は腰にぶら下げておけるのでいつでも一緒に移動して正しい値を測定することができます。

手で握りしめた状態で測定すると体温や汗の気化によって誤差が生じる

どんな温湿度計でも避けて通れないのがこの問題です。当たり前の話ですが、センサを内蔵しているタイプの測定器を手で握りしめていると体温が伝わってしまい温度が高く表示されてしまいます。また、体表面では絶えず汗が気化していますので湿度も高めになります。理想的な測定は、ストラップなどを持って直接肌に触れないようにして体から少し離すとよいでしょう。

先ほども紹介しましたが、ケストレルポケット気象計は、温度と湿度のセンサが写真のように外部に露出させた特別な位置に取り付けられており、本体を握りしめていても体温や湿度の影響が伝わりにくい構造になっています。

ケストレルのセンサ(写真中央の白い突起物と青い線)は気象計を手で握った際に人間の体温の影響を受けないように外部に独立した形で取り付けられています。白い部分が湿度計、青い部分が温度計のセンサです。
個体差があり同じ製品でも多少のズレが生じてしまう

まったく同じ温湿度計でも並べて測定してみると数値がピタリと一致することはほとんどありません。これは、置いた位置がわずか数センチでも温度や湿度に差があることと、ある程度のメカニカル的な誤差が生じるからです。

ポケット気象計は、温度が1度、湿度が±3%ぐらいの精度で表示できるものもありますが、一般的な温湿度計は、温度が2度、湿度が10%~15%ぐらいの精度になっています。ちなみに「見守りっち」は、温度が±1.5度、湿度が±15%です。

デジタルタイプの温湿度計は、数字で確認できるため、0.5度も差が出るとかなり違いがあるように感じてしまいますが、実際には完全に精度の範囲内です。特に湿度は周囲の影響を受けやすいこともあり、構造的なものも含めてどうしても差が大きくなりがちです。

しかし、ポケット気象計でもそれなりに個体差があり、温度や湿度がピッタリ一緒になることはまずありません。どうしても数字の差が気になる方は、逆に細かい値がわかりにくいアナログタイプのほうがよいでしょう。

精度と先に述べたタイムラグは別の話なので、もし、測定値が他の測定機器と大きく数字が離れているよでしたら、「安定した測定値を得るためには周囲の環境に一定時間馴染ませる」「風がある場合とない場合では馴染む時間に差が生じる」「手で握りしめた状態で測定すると体温や汗の気化によって誤差が生じる」を思い出して対処してみましょう。

また、同じ製品であってもカバンやケースから取り出した順番で周囲の環境に馴染んで行きますので、一定時間が経過しないと同じ値にはなりません。

以上を踏まえた上で温湿度計を利用するとより精度の高い測定が可能になります。とても大切なことなので覚えておいてください。

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著者プロフィール

マイナビ出版 旬モノ編集部(出版社)
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