新刊案内「大きな字で読みやすい囲碁シリーズ 武宮の形勢判断」

 

地を囲わない努力──
来週発売される「武宮の形勢判断」のサブタイトルです。

 

地の大小を競うゲームなのに、地を囲わない??
なにやら禅問答のように思えますが、これが宇宙流(または自然流)と呼ばれる武宮九段の考えです。

 

本書では武宮九段が囲碁上達に必要不可欠な「大局観」を、自身とアマチュアの実戦譜を通じて具体的に解説しています。

 

その中の一局をハイライトでご紹介します。
第40期十段戦で、当時の王立誠十段に武宮九段が挑戦した一局。武宮九段の白番です。

40手ほど進んだ局面です。この時点の形勢をどう評価しますか。
黒はあちこちに目にみえる地を持っており、なにより左上白5子を取り込んでいます。

一方、白地といえるところはほとんどありません。
黒持ちの方がほとんどなのではないでしょうか?
が、武宮流の形勢判断では互角(!)のイイ勝負なのです。

 

このあと、さらに40手ほど進んだ局面です。

下辺でも黒に生きられてしまいますが、よく見ると右下の黒がまだはっきり生きておらず、さらには右辺から中央にかけてが白っぽくなっています。ここで、武宮九段は形勢白良し!の判断をされます。

 

このあと、右辺にとり残されている黒1子に動きだされるのですが、攻めながらの余得で着実にポイントを重ねます。最後は1目半で白の勝ちとなりました。

 

終局図がこちら。

布石段階の図からは思いもつかない箇所に白地がついています。これが武宮九段がいつもおっしゃっている「最後に地が多いほうが勝ち」の意味なのでしょう。
武宮九段はこう表現しています。

 

──地は人生に置き換えると、お金と一緒です。今の世の中、お金を評価しすぎだと思いませんか。言い換えると地を評価しすぎとも言えるでしょう。
人生が終わるとき、いい人生だったと思えることが、碁では最後に地が多い、ということになるのです──

 

カテゴリ: 新刊案内, 編集部から