「ヒカルの碁」に精神を学び、「石倉九段」の本でルールを学び、「AI囲碁」で対局する – 2【ヒカルの碁】

こんにちは。ケイです。「IGOJIN Beginners」の編集は佳境に入っています。少しでも早く皆さんのお手元に届けられるようがんばっています! さて、前回は通勤時間を使って囲碁を学びたい方のための入門アイテムとして、週刊少年ジャンプの「ヒカルの碁」、石倉九段の「決定版! 囲碁入門その後の最速上達法」、囲碁ソフトの「AI囲碁」の3つをあげました。今回はこの中で「ヒカルの碁」について話をしたいと思います。

 

「ヒカルの碁」は、原作:ほったゆみさん、マンガ:小畑健さん、監修:梅沢由香里五段(当時)による囲碁マンガです。アニメや小説、ゲームにもなった大ヒット作で、ご覧になっていた方も多いのではないでしょうか。物語は、まったく囲碁に興味がなかった主人公「ヒカル」が、藤原佐為(ふじわらのさい)という平安時代の最強の棋士の霊に取り憑かれるところからスタートします。ヒカルは、佐為が取り憑いたことによって、その後さまざまな人物たちと出会うことになり、人生が大きく変わってしまうような対局も経験します。そして、想像もしていなかったプロ棋士への道を歩み始めるのです。

 

このマンガの凄いところは、碁盤の絵がやたら出てきて対局の様子を細かく解説していくと言ったものではなく、主人公の人間模様を全面に押し出して、囲碁を知らなくても楽しめる内容に徹しているところです。囲碁に少しでも興味をある人はさらに面白さが増しますが、誰が読んでも面白いというコンセプトは、地味になりがちな囲碁マンガの中で異色の存在でした。とは言え、はしばしに登場する対局の中身は、梅沢由香里さんが監修をしているのでとてもしっかりとしたものです。たった数コマの対局でもきちんと意味のある布石となっており、上級者の方が見てもなるほどとうなずくような内容です。

 

梅沢由香里さんといえば女流棋聖3連覇の達人で、NHKの大河ドラマ「篤姫」の囲碁の指導もされおり、毎日コミュニケーションズからも「マイコミ囲碁ブックス 梅沢由香里の石の捨て方入門」を以前に執筆いただきました。ちなみに梅沢姓はご結婚されるまえの名字で、今年の4月から本名である吉原姓で活躍されています。

 

さて、私は電車が目的の駅に到着したことさえ気づかないほど夢中になって「ヒカルの碁」を1週間ほどで読み切ったわけですが、娯楽作品として面白いだけでなく、私はこのマンガから碁を打つ際の心の在り方を学べたと思っています。というのも、さまざまな囲碁の入門書が発行されていますが、ほとんどのものはルールであったり、あるいは石の打ち方だったりして、実際に対局に臨む上での精神的なアドバイスがあまり書かれていません。また、新聞や雑誌に掲載されている有名な棋士のインタビューは、これから囲碁を始めようというタイミングの私にはまだ理解できず、生かすことができませんでした。

 

しかし、「ヒカルの碁」は違いました。私と同じように囲碁に興味がなかった少年が、少しずつ経験を積みながら徐々にのめり込んで行く姿は、当時の自分そのものでした。ヒカルが藤原佐為の力を借りずに自分自身で打ってボロクソに負けたり、あるいはちょっとした焦りや悩みで混乱してしまい、どう打ったらいいのかわからなくなるシーンは、心の底から共感できました(強さはヒカルのほうがずっと上ですけどね)。

 

囲碁を初めるまではわからなかったのですが、才能やテクニックに加えて非常に強い精神力を必要とする競技です。「ヒカルの碁」では、さまざまな登場人物の心の動きが見事に描かれています。攻めたり攻められたりする中で、弱い棋士は弱いなりの崩れ方を、強い棋士は強いなりの崩れ方をしていく様子はとても参考になりました。

 

おかげさまで「AI囲碁」でメタメタに負けた後に「ヒカルの碁」を読んで「そうだ、こういう気持ちで打てばいいんだ」と参考にして打つと必ず連勝したものです。しかし、コンピュータは私が勝ち進むと対局レベルがアップするので思いもかけない所に突然打ってきます。それに翻弄されてずるずると連敗してしまいます。そうしたら「こんな時は、ヒカルだったらどうしたっけ?」とまた「ヒカルの碁」を読んで、気持ちを新たにしてコンピュータに挑戦…というパターンを当時は繰り返していました。残念ながらヒカルのように強くはなれませんでしたが、「ヒカルの碁」で学んだ精神は実際に人間と対局する際にもかなり役に立ちました。

 

誰もが気軽に電車の中で囲碁の精神を学べる本はおそらくこの「ヒカルの囲碁」だけだと思います。私がこのマンガを入門者向けの最強のアイテムの1つとしているのにはこんな理由があるからです。

 


 

 

 

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