まか不思議な世界を描いた短編集『迷宮へようこそ』発売


脚本家の武山博さんの短編集『迷宮へようこそ』がKindleStoreで発売になりました。

 

本書は1999年に近代文芸社の「現代日本の短編作家シリーズ」の一冊として刊行された『壺中の天』を改題して電子化したものです。物語の主人公が体験するのは、時に滑稽で、時にほろ苦く、そしてまか不思議な世界……。

 

「樹海」●一見、平凡に見える中年男は大の発明狂――。さまざまな失敗を繰り返し、やっと海水を利用してエネルギーを生み出す大変なアイディアを思いつきますが、実現させるための資金も、援助もなく、そのうえ考えついた思いつきも大失敗。家族からも愛想をつかされ、起死回生の方法を考え出しますが、さて、その主人公のたどる結末は……。

 

「八百留の話」●流行らない飲食店の主は、何をやっても大繁盛の商売上手な留さんの秘訣を探ろうと考えます。どうすれば近づき、その方法を教えてもらえるか? 苦労の末、チャンス到来。留さんの話に耳を傾けると、驚くような秘訣が……。

 

「綱右衛門」●客の減少に悩む映画館の経営をまかされた主人公は、実演ショーを企画します。そんな時、サーカス芸人上がりの浪曲師が上演させてほしいと現われます。怪談話を演じ、クライマックスに達した時、客席の頭上に張った鉄線で“綱渡り”をするというのです。初日は大成功。ところが、その夜、ひょんなことで天井裏へ上がり大変な事実を知ります。しかし、その直後、主人公は足を滑らせて落下、即入院の憂き目に……。二日目の興行が始まり“綱渡り”の時間が迫り、大事故が起きるのが分かっていても入院先のベッドの上ではどうすることも出来ません。さて、事の顛末は……。

 

「三年坂」●作詞家の主人公は子供の頃、坂のある商店街の一郭に住んでいましたが、人情味あふれるその街は自分にとって懐かしい故里でもありました。そこで知り合ったギターの先生や、和菓子屋さん一家との心温まる交流があればこそ、あえて仕事場をこの地に構えたのです。けれど、この土地は哀しい伝説を秘めた土地なのでした……。

 

「『方丈記』異聞」●川のほとりに住む主人公は、正義漢で住民運動の先頭に立って活躍しています。その運動を持続させるため「機関誌」を発行することになりますが、なかなか記事が集まりません。そんな折、名前を明かさない人物から格好の記事が寄せられました。面白い内容なので続けてほしいと思うのですが、身許が不明。やがて、その人物の所在が判明しますが、それは……。

 

「八幡の藪知らず」●主人公は腹が立って仕方がありません。会社の宴会の帰り、同じ課の部下の女性を誘うと失礼な言葉を浴びせられたからです。何の野心もなく、好意のつもりの誘いが仇になったのです。溜まった不満を発散させようと、主人公は、ふと目にとまったチラシ広告を手にアバンチュールの旅へ出発します。すると、その広告は魔力のようにある所へと主人公を誘導するのでした……。

 

「壺中の天」●遊園地の催し物の一つ「お化け屋敷」でバイトを始めた主人公は、そこで風変わりな男と出会い、その縁で不思議な世界を覗き見ることになります。ところが、その世界を覗いた人間は破ってはいけない掟を負わされることになります。さて、主人公はそこから抜け出せるのでしょうか……。

 

定価350円。KindleStoreで好評発売中です。是非ともお読み下さい。

 

 

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