映画『ディバイナー 戦禍に光を求めて』が2016年2月27日より劇場公開されます。この作品に主演し、監督デビューも果たしたラッセル・クロウ氏が作品について語ってくれました。
──どのような経緯で本作を監督することになってのでしょうか。
「脚本を読んだ瞬間、これまでにない経験をしたんだ。何と言うか脚本が響いてきたんだ。物語が聞こえるだけではなく、映像まで目に浮かんできたのさ。初めて読んだ瞬間から『私にはこの作品に対する責任がある』と強く感じたのさ」
──まるで一目惚れみたいですね。
「仕事を選ぶときはいつもそう。深い繋がりを感じることが大事なんだ。いつも鳥肌が立つような肌で感じる企画を探しているけど、50本の脚本を読んでも何も感じないこともある。『グラディエーター』、『ビューティフル・マインド』、『マスター・アンド・コマンダー』、『アメリカン・ギャングスター』。これらどの作品でも、私はいつも特別な絆を感じたんだ」
──これまで俳優として圧倒的なキャリアを積んでこられたあなたが、なぜいま映画監督をしようと思ったのでしょうか。
「これまで俳優人生の中で何度も問題にぶつかったが、それを監督と共に解決してきたことで監督について学んだからさ。問題をどう解決するのか、カメラをどう使えば良いのか、とかね。最近監督業を始めたわけではなく、これまでに30本以上のビデオクリップを撮ったし、長編ドキュメンタリーも撮っているので、映画を監督するのはとても自然な流れだった。経験を積み、たまたま自分の感性と合った脚本に出会うことができたから、今度は自分が監督しようと決めたんだ」
──ガリポリの戦いのような歴史的な出来事を監督することにプレッシャーを感じませんでしたか。
「プレッシャーを感じたのは、この戦いは何度も描かれているので、なぜいまさらまたこの戦いを映画にするのかと言う点だけだね。オーストラリアで育った年月の中で見聞きしたガリポリの戦いは全てオーストラリアの視点で描かれていた。一度として反対側からこの戦いを考えたことなど、私自身なかった。この脚本は頭から逆の視点で描かれているよね。この歴史に残る悲しい戦いが、一度は敵だった人間からの視点で描かれている。だからこそ、映画化しなければならないと思ったんだ。オーストラリア人が見たら、自分がよく知っていると思っていた出来事に全く違った一面があるのだと気付いてくれると思うよ。だからこの映画はオーストラリア視点からの歴史的出来事としてだけではなく、歴史の記録として大事なんだ」
──実際に監督されていかがでしたか。
「私はラグビーチームのオーナーでもあるのだが、俳優の経験だけでなく、スポーツチームという組織的な団体での経験が映画の現場でとても役に立ったよ。負け続きのチームをチャンピオンにするのに9年掛かった。色々な要素が同時に動く映画を完成させるのは、チームの経営に似ていたね」
──監督として苦労もありましたか。
「そんなのは当たり前さ。それが映画だからね。特に監督という立場であれば、映画はそういうものだと理解している。これまで数多くの作品に出演しているので、色々な問題にぶつかってきたから映画たるものは何なのか、分かっているつもりだ。だからこそ、役者たちの質問にも、すぐに答えることができた。初めて長編映画に出演したのが25年前。それから一度も休まずこの世界で働いてきた。そうして養ってきた豊富な知識と経験が私にはある。だから苦労も、大変な日もあったが、それも映画の一部だとわかっていたさ。映画撮影では、厳密なスケジュールがあるから1日の目標を立てたらそれを達成せずに投げ出すことはできない。時は金であり、無駄にすることはできない。だから、私はひとつのシーンを複数のカメラで撮影したんだ。私の撮影では昔ながらの手法と新しいものを融合させている。リハーサルなどの準備を入念にするのは昔ながらの方法。新しいのはデジタルカメラでの撮影を、一度に複数で行うこと。ワンシーンを様々な角度から撮影することで沢山の素材が残すことができる。素早く撮影することがどれだけ大事かということは、これまで多くの作品に出演してきたからこそ知っていることなんだ」
──今後、監督したいテーマやジャンルはありますか。
「まだ次の作品はどんなテーマになるか分からないが、きっと自分でも予想しなかったような作品を撮るんじゃないかな。私が作品を選ぶときはいつもそうなんだ。やったことのないことを挑戦したい。前にやったことのあることよりも、新しいことの方が楽しいからね」
映画『ディバイナー 戦禍に光を求めて』は2016年2月27日より全国公開です。
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