映画『シェル・コレクター』 坪田義史監督インタビュー


リリー・フランキー15年振りの単独主演作となる『シェル・コレクター』が2016年2月27日より公開されます。Creative Nowでは、この作品を監督した坪田義史氏にお話をうかがいました。

 

坪田義史(映画監督)
1975年 神奈川県出身。多摩美術大学在学中に制作した映画『でかいメガネ』(2000年)で「イメージアートフォーラム・フェスティバル2000」でグランプリ受賞。劇場デビュー作品『美代子阿佐ヶ谷気分』(2009年)で、国内外で高い評価を得る。2012年は文化庁在外芸術家派遣によりニューヨークと日本で活動。最新作『シェル・コレクター』が2016年2月27日より公開。


 
──『美代子阿佐ヶ谷気分』以来の監督作品ですね。

 

「『美代子阿佐ヶ谷気分』はサブカル的な要素が強い作品だったのですが、海外では日本のアートフィルムとして興味を持っていただけたんです。今作では、そういった要素をより強めて作りたいと考えていました。また、前作は極私的な漫画家が題材で畳部屋の密室がメインだったので、今回は大自然の中で開けた視点、世界観で映画が作りたかったのです。そこで、アンソニー・ドーア氏の小説を日本に置き換えて映画化しようということになりました」

 

──映画では原作の物語を忠実になぞりつつも、舞台が日本の南の島に置き換えられ、奇病や環境汚染などが蔓延したデストピア的な未来が描かれています。

 

「2011年の震災以降に渡米して、そこで日本人としてのアイデンティティをより強く感じ、また客観的にも日本を見ることができました。僕自身、震災以降は鬱になって、先行き真っ暗な未来の無い日本の光景ばかりを想像していました。未来に対する危機感や脱力感を作品を作ることで打破したいという気持ちがありました」

 

映画『シェル・コレクター』
世界中で死に至る奇病が蔓延する中、沖縄の離島で盲目の貝類学者が静かに暮らしていた。ある日、学者の元に奇病を患った女性画家が流れつく。貝類学者の発見した貝の毒で女性画家が回復したことで、様々な人々が救済を願い貝類学者の元に押し寄せてくるのだった。
(C)2016 Shell Collector LLC(USA)、『シェル・コレクター』製作委員会

 

──重いテーマの作品ですが、水中映像や貝の姿など自然を捉えた映像は非常に美しいですね。

 

「撮影では色々なメデイアが混在しています。水中の本当の美しさを描きたかったので、水中撮影ではCGを使用せず、リリーさんに実際に潜っていただき4Kで撮影しました。それと対比するように日中のシーンはすべて16mmフィルムで撮影しています。アナログな機材でノスタルジックな画を目指したんです。また、ナイトシーンでは暗闇に強いHDを使い、少ない光量の中で闇を捉えるようにしました。こういった使い分けで、生々しいもの、まだ見ぬ未来感、などが混在した寓話性のある映像を作りたかったんです」

 

──善悪や人間の有り様、人類の未来に関してさえも、この作品では明確な答えを提示せず、観る側に委ねられています。

 

「自分の映画の鑑賞スタイルが変だからかもしれないですね。色々な映画を観て、皆で感想を言い合ったりするのですが、自分の感想は対外、的外れだったりするんです。日本映画ではアブストラクトな作品は少ないのですが、視聴覚を刺激しつつも、観た人の感性に委ねる作品にしたいと考えていました」

 

──非常に企画が実現が困難な作品だったと思うのですが、活動のしにくさなどを感じることはないですか。

 

「僕はこれを仕事として捉えていなので。あくまでも作品を作るだけなので、普段は仕事としてコマーシャルなどを作っていると、映画を作るときには表現欲のタガが外れるのかも知れません」

 

──CF制作は映画監督にどのように活かされているのでしょうか。

 

「個人的に社会との接点を見つけられますし、何よりも技術的な部分を学べます。依頼された仕事の中に必ず何らかのオリジナリティをねじ込み成立させたいという気持ちにもなります。そして生活の為に、必要です」

 

『シェル・コレクター』は2016年2月27日より公開されます。

 

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