伝説の舞台を古屋兎丸が漫画化した『ライチ☆光クラブ』。カルト的な支持を集めるこの漫画を映画化した内藤瑛亮監督にお話を伺いました。
──『ライチ☆光クラブ』の原作のどのような部分に魅力を感じたのですか。
「大人や社会を破壊したいという10代の鬱屈した感情が残酷な暴力に結びつくという構図が、僕がこれまでつくってきた作品世界に通じると感じました」
──この作品の映画化で、どのようなこと目指したのでしょうか。
「これまでやったことがなかったフィクション性の高い世界観の構築ですね。廃工場を中心とした限定的な空間で展開し、陽を浴びるシーンが殆どない閉塞感があり、オイルの匂いのするスチームパンク的な世界を映像化したかったんです。単純にロボットを撮りたかったっていう気持ちもあります(笑)」
──主役とも言えるロボット ライチのデザインも非常にユニークです。
「『アイアン・ジャイアント』は意識しました。あくまでもかっこいいロボットではなく、無骨でかわいらしい、子供が作った拙さがあるってコンセプトで造形しました」
──作品では凄惨な殺人と平行してライチとカノンの純愛も描かれます。
「少年たちが破滅する一方で、ライチとカノンの純愛が紡がれていくことが物語の軸です。ライチは少年たちが失った純粋さの象徴だと捉えました。光クラブ自体が、ゼラを中心とした内面世界ともいえると思うんです。9人の少年たちは、暗い欲望の様々な側面を表した人格のようなもので、少年たちが破滅していくのは、純粋さを象徴するライチによって、暗い欲望が浄化されていくことを示唆しているのではないか、と」
──内藤監督の作品では、いつも女性が酷い目に遭いますが、今回は比較的優しい扱いを受けているという印象があります。
「確かにこれまでの作品では女性を優しく抱きしめるよう描写はなかったですね。知人にも驚かれました。結婚したから、そういった部分が影響しているのかも……」
──少年犯罪の動機のあいまいさも内藤監督の作品の特徴です。
「あいまいであるほうが、僕はリアリティを感じるんです。最初に神的な化け物を出したのは映画のオリジナルなのですが、バモイドオキ神みたいに、罪を犯した少年が神的な存在をつくりだし、暗い欲望を託し、自分の行為を正当化するという事例を参考にしました」
──随所に登場するスプラッター描写も非常に過激でした。
「映画における残酷描写は、見世物小屋的な意味もありますし、僕にとってはお祭りに近い感覚なんです。現場で血糊を噴き出すときは、花火を眺めている気分です。この映画では、死が浄化でもあるし、犯した罪の重さを認識させるためにも残酷さは不可欠でした。残酷描写を徹底的にやる監督って、僕に限らず倫理観は強いと思います。倫理観があるから、意識的に倫理を揺さぶることができるし、倫理に反した行動をした者に残酷な制裁を与えます」
──本作に続いて『ドロメ』2部作が公開されます。非常に多忙な内藤監督ですが、これからはどのような作品を作っていきたいですか。
「僕にしかできない形で撮れるっていう閃きが生まれた企画はやっていこうと思います。また、罪を犯す少年少女側の視点で描く作品を撮ってきたので、罪を犯した少年少女に対して大人や社会はどう向き合うべきなのかという点も描きたいと思っています」
映画『ライチ☆光クラブ』は2016年2月13日より公開です。
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