『残穢【ざんえ】-住んではいけない部屋-』 中村義洋監督インタビュー


『アヒルと鴨のコインロッカー』、『白ゆき姫殺人事件』、『予告犯』などジャンルを問わずに様々な作品を手掛けてきた中村義洋監督の最新作『残穢【ざんえ】-住んではいけない部屋-』が2016年1月30日より公開されています。自身の原点ともいえる恐怖映画を監督した中村氏にお話を伺いました。

 

中村義洋 (映画監督)
1970年生まれ。茨城県出身。大学在学中、『五月雨厨房』でぴあフィルムフェスティバル準グランプリ受賞。崔洋一監督、伊丹十三監督らの作品で助監督を務め、『ローカルニュース』(1999年)で劇場映画デビュー。主な監督作品は『絶対恐怖 Booth ブース』(2005年)、『ルート225』(2006年)、『アヒルと鴨のコインロッカー』(2007年)、『チーム・バチスタの栄光』(2008年)、『ジャージの二人』(2008年)、『フィッシュストーリー』(2009年)、『ジェネラル・ルージュの凱旋』(2009年)、『ゴールデンスランバー』(2010年)、『ポテチ』(2012年)、『みなさん、さようなら』(2012年)、『奇跡のリンゴ』(2013年)、『白ゆき姫殺人事件』、『予告犯』(2015)、『殿、利息でござる!』(2016)など。『ほんとにあった! 呪いのビデオ』シリーズ初期作品に演出・構成・ナレーションなどで参加。最新作『残穢【ざんえ】-住んではいけない部屋-』は2016年1月30日より公開中。

 
──『残穢【ざんえ】-住んではいけない部屋-』は中村監督にとって久々の本格的な恐怖映画です。どのような経緯で本作を監督することになったのでしょうか。

 

「小野不由美さんの担当編集者から”『残穢』の映画化に関して小野さんが中村監督を希望している”と連絡があったんです。原作を読んでみると非常に怖かったので、是非自分で映像化したいと思いました。前作の『白ゆき姫殺人事件』では、後味の悪い映画を作ろうと意図していたのですが、完成すると意外と良い話に仕上がっていた。じゃあ、今度こそ徹底的に後味の悪い話をやろうと思いました」

 

──この原作には、中村監督が関わっていた『呪いのビデオ』などの影響が感じられます。モダンホラー小説というより、実話怪談系に近い印象です。

 

「小野さんが原作でやりたいことに『呪いのビデオ』的な要素があったそうなんです。原作を読んで、僕と小野さんは別の場所で一緒の方向に進んでいたような印象もありましたね。目指す恐怖表現とか、何を怖いと感じるかなどが非常に近いと感じました」

 

映画『残穢【ざんえ】-住んではいけない部屋-』
怪談実話作家である私(竹内結子)の元に女子大生の久保さん(橋本愛)から一通の手紙が届く。久保さんの部屋で起こる怪異現象に興味を持った私は調査を開始するが、次第に取り返しのつかないほど恐ろしい事態に巻き込まれていくのだった。
(C)2016『残穢【ざんえ】-住んではいけない部屋-』製作委員会

 

──この作品の本当に怖いところはいわゆるショック表現ではなく、現実との地続き感ですね。

 

「そうですね。僕たちの住む場所には何らかの因縁がある。調べてみると因縁がない場所はないに等しい。住んで良いところはどこなんだ。どこにもないのではないか、という恐怖ですね」

 

──久々に恐怖映画を監督されて、原点回帰のような気持ちもあったのでしょうか。

 

「昔のホラーの仕事が確実に今に繋がって役に立っているという気はします。また、『残穢』を撮ったことで、ホラーをもう一度撮りたいと思いました。作り手としてこんなに面白いというか、力が注げるジャンルは他にないと思います。ちょっとした編集や音で印象が大きく変わる感覚は独特のものですし、今はその醍醐味を感じています」

 

──ご自身の恐怖表現に関して、昔との変化などは感じられますか。

 

「監督として場数を踏んだ分、進歩はしていると思います。ただ、『呪いのビデオ』は別として、フィクションとしての恐怖演出を真面目にやったのは、実は今回が初めてかもしれません。『残穢』では、”このタイミングで霊を出せば怖い”、”もうワンカット待って出せば怖い”というような感覚をしっかりと編集で実践できたと思います。昔は時間も経験もなかったので、勘だけで編集していましたから」

 

──正直、Jホラーにおける恐怖表現は完成してしまった印象もあり、それが閉塞感にもなっていました。そのような状況の中、『残穢』で新しい恐怖表現を見せたいという意識はあったのでしょうか。

 

「原作の良さを生かして映画にということに注力していたので、そこまでの意識はなかったですね。ただ、上手くいったら、出来るかもという期待はありました」

 

──これから中村監督はどのような作品を作っていくのでしょうか。

 

「伊坂幸太郎さんの原作もまた映画化したいですし、『みなさん、さようなら』のようなジャンル分け不能な映画もまた撮ってみたいですね」

 

映画『残穢【ざんえ】-住んではいけない部屋-』は2016年1月30日より公開中です。

 

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