AKB48の島崎遥香主演のホラー映画『劇場霊』が2015年11月21日より公開されます。本作の監督 中田秀夫氏は 、『女優霊』や『リング』シリーズといった作品でJホラーブームを牽引してきた重要人物です。Creative Nowでは最新作『劇場霊』について中田監督にお話を伺いました。
──『劇場霊』は企画が秋元康氏で、主演がAKB48のメンバーです。また、サイドストーリーを描いた深夜ドラマで物語が補完されます。この構造は中田監督の『クロユリ団地』と同じですね。
「『クロユリ団地』のヒットを受けて、この企画が動き出したんです。僕はその頃『MONSTERZ モンスターズ』を監督していたのですが、確かに同じ流れですね」
──また、『劇場霊』というタイトルは中田監督の出世作とも言える『女優霊』を彷彿とさせます。
「ありがたいことに秋元康さんが『女優霊』のファンだったそうなんです。Jホラーと呼ばれる『女優霊』が誕生してから丁度20年ということで、タイトルもリンクしたものになりました」
──秋元氏から、作品の内容などに関してリクエストはあったのでしょうか。
「それもよく訊かれるのですが、ほとんどリクエストや縛りはなかったんですよ。『クロユリ団地』も『劇場霊』も、AKB48のメンバーからオーディションで主演を選んで撮るホラー映画を作るという条件だけで、あとは好きにやらせていただきました。秋元さんの”団地って怖いですよね”、”劇場って怖いですよね”というシンプルな言葉から、動き出した企画なんです」
──『女優霊』や『リング』シリーズで、現在のJホラーのスタイルを中田監督が確立させたというイメージがあります。ところが『劇場霊』はいわゆるJホラー映画というより、怪奇映画というか怪物映画的な印象が強く、非常に驚かされました。
「劇場に巣食う地縛霊というようなものがJホラーの王道だと思うのですが、僕自身それはもう見飽きたというところから本作は始まっているのです。Jホラー的な表現だけでなく、往年の東宝怪奇映画というか怪奇ゴシック的なイメージの作品にしたいという意図がありました。あえて、実体ある存在が意思を持って動くという恐怖表現をやりきってみたかったのです」
──新しい恐怖表現へ踏み込むことへの迷いはなかったのですか。
「この映画の脚本ができた時点で『いける』という実感もありましたし、撮影しているときは恐怖表現に関しても迷いはなかったですね。ただ、編集の時点では、やり過ぎないように配慮しました」
──また、本作では恐怖や死に関して直接的なショック表現が多いですね。
「実は『女優霊』は今の若い人の間では評価が二分されているんです。”怖い”といってくれる人もいるのですが、”あいまいで何が起きているのかよくわからない”という意見も多いんですよ。『劇場霊』では、Jホラー特有の嫌なものを観てしまったという実話テイスト寄りではなく、怖いものをしっかりと見せるエンターテイメントの方向を目指しました。お化け屋敷的に悲鳴を上げて楽しんでもらいたいですね」
──主演の島崎遥香さんはいかがだったでしょうか。
「佇まいがホラー映画向けというか、不安で自信なさげな表情にピンと来るものがあり、彼女を主演に起用しました。人気アイドルグループの中で自分が持っていた不安感や自信のなさを沙羅という役に上手に重ねて表現してくれたと思います。ホラーはヒロインの不安や恐怖に観客が共感し楽しんでくれるものなのですが、彼女はそれを良く理解して演じてくれました」
──これから中田監督はどのような作品を作っていきたいのでしょうか。
「渡米した頃はホラー映画を撮るのは嫌だとか、ホラーから抜け脱したいと意識していたのですが、今はそういったこだわりはないですね。ものつくりは新しい挑戦がないとつまらないのですが、映画にはまだその余地が残っていると思うので、それを追求していきたいですね。具体的には、ホラーに限らずヒロインが映える映画を撮りたいです。ヒロインの映える2010年代ならではの新しいサスペンス映画を撮ってみたいですね」
映画『劇場霊』は2015年11月21日より全国公開されます。