EOS Kiss X7登場!世界最小最軽量の一眼レフがもたらすもの


3月21日、キヤノンから「EOS Kiss X7」(市場想定価格約8万円)と「EOS Kiss X7i」(市場想定価格約9万円)という2種類のデジタル一眼レフカメラが発表されました。発売は、4月下旬を予定していますが、デジカメユーザーにとってみれば「前のモデルと違いがないんでしょ」と思われている方もいるかもしれません。

 

EOS Kiss X7iです。X6iの後継機となり、スペックはほぼ一緒です。

 

EOS Kiss X7です。スペックはX7iやX6iより多少落ちますが、世界最小最軽量のデジタル一眼レフカメラです。

 

これは、インクジェットプリンタにも言えることですが、進化もある程度のところまで行ってしまうと劇的な変化というものが少なくなってきます。デジタル一眼レフカメラで重要な基本性能は、「画質」「感度」「連写速度」「フォーカス精度/速度」などがあり、新製品が登場するたびに画素や感度がアップされたり、撮影スピードが速くなったりしています。ただ、画素も1800万だの2000万だのというレベルになるとデータ容量もかなりのものになってしまい、カメラ内部での処理だけでなく、パソコン等での加工や保存が大変になって来ています。「感度」「連写速度」「フォーカス精度/速度」については、まだまだ進化の余地がありますが、連写速度はボディサイズをある程度小さくするとどうしても上限が決まってきますし、「フォーカス精度/速度」についても一眼レフカメラはかなりのところまで来ており、大きな変化はなかなか起きないでしょう。「感度」については、最近のデジタル一眼レフは、高感度の常用がISO6400〜12800という恐るべき領域に入ってきていますが、こちらはまだまだ期待したいところです。

 

最近のインクジェットプリンタは、ミドルクラス以上のモデルの印刷結果を見るとその違いは、ほとんどわからなくなってきました。印刷速度も充分速く、各メーカーもすでに数年前から従来の売りであった「画質」と「速度」よりもユーザーインターフェイスや無線LAN、Cloud対応、ボディサイズといった、ライフスタイルに直結するような部分に重点を置くよになってきました。インクジェットプリンタに比べるとデジタル一眼レフカメラは、まだまだ改善の余地があると思いますが、それでも画質の劣化やデータの肥大化につながる無意味な画素競争の時代はさすがに終わりを告げる時期が来ているように感じます。これからは、ユーザーにとって本当に大切な部分についてどこまで進化させることができるのかがポイントではないでしょうか。

 

レンズ交換式カメラという点では同じコンセプトのミラーレスカメラがここ数年で急成長を遂げ、キヤノンによれば2013年は、デジタル一眼レフカメラの市場規模に匹敵する伸びになると予想されるとのことです。ミラーレスカメラのメリットは、なんと言ってもその携帯性の良さです。デジタル一眼レフカメラ並みの画質と高速連写機能を備えながら、圧倒的にコンパクトなそのボディは、大きく市場に受け入れられました。今回登場した「EOS Kiss X7」と「EOS Kiss X7i」は、そんな状況の中でキヤノンが送り出してきた初心者向けのデジタル一眼レフカメラです。

 

「EOS Kiss X7」と「EOS Kiss X7i」の違いは、ボディサイズ(X7はX7iよりも遥かに小さい)、連写速度(X7は約4コマ/秒、X7iは約5コマ/秒)、撮影可能枚数(JPEGラージ/ファインでX7は約28枚、X7iは約22枚)、ファインダ倍率(X7は約0.87倍、X7iは約0.85倍)、バリアングル液晶搭載(X7iのみ)、ハイブリッド CMOS AF IIの採用(X7のみ)といったところです。わかりやすく言うと、X7iは性能を従来のX6iよりも高め、X7は多少機能を減らしてでもとにかく小型軽量を目指したというところでしょうか。X7iは、ボディがX7よりも大きい分、連写速度は約5コマ/秒、バリアングル液晶を搭載していますが、前モデルのX6iの後継機的位置づけで、それほど大きな変化はありません。X7は、とにかく世界最小最軽量を実現するために多少機能アップは減らしてでも驚くべき小ささになっており、今回注目したいのはこのX7のボディサイズです。

 

X7iの側面です。ボディの厚みは78.8mmあります。

 

X7です。ボディの厚みは、69.4mmです。

 

X7iの幅は、133.1mmあります。

 

X7iの幅は、116.8mmです。

 

個人的には、X7を見た瞬間に思わず「えー!」という言葉を発してしまうほど、そのコンパクトなボディにビックリしました。これまで時代ごとに世界最小最軽量という一眼レフは数多く登場して来ましたが、今回はその中でも一番衝撃的です。同社のミラーレスカメラであるEOS Mと比べると、ざっくりとですが、横幅はEOS Mとほぼ同じで、高さはペンタプリズム分だけ大きく、厚みは約倍ぐらいという印象です。数値的に正確に比較すると以下のようになります。

 

◯幅  M=約108.6 vs X7=約116.8 8.2mmの差

◯高さ M=約66.5 vs X7=約90.7 24.2mmの差

◯奥行 M=約32.3 vs X7=約69.4 37.1mmの差

◯重量 M=約262g vs X7=約370 108gの差

 

EOS Mに比べると大きいのですが、見た瞬間に本当に驚きます。EOS Mが多くの既存EOSユーザーにそのコンパクトさが評価されているように、それに近い恩恵をユーザーに与えてくれます。EOS Mはレンズにおまけでカメラボディが付いているような感覚で持って歩くことができますが、X7はそれに近いものがあります。デジタル一眼レフカメラもここまで来たのかとしみじみ思います。ちなみにX7iと数値を比較すると以下のようになります。

 

◯幅  X7i=約133.1 vs X7=約116.8 16.3mmの差

◯高さ X7i=約99.8 vs X7=約90.7 9.1mmの差

◯奥行 X7i=約78.8 vs X7=約69.4 9.4mmの差

◯重量 X7i=約525g vs X7=約370 155gの差

 

ほぼ同じスペックの一眼レフカメラをここまで小さくするのは相当な努力が必要だったでしょう。X7は、ミラーレスカメラを持ち運ぶ感覚で一眼レフカメラを使いたいというユーザーの心を掴むには充分な内容だと思います。

 

ミラーレスカメラは、コンパクトで高性能という魅力的なカメラではありますが、被写体をダイレクトに捉えるというメリットは、一眼レフカメラでなければ不可能です。電子式ファインダの一眼レフタイプのカメラもありますが、正直なところあまり魅力を感じません。明るい屋外でも鮮明に被写体を見ることができ、動きをリアルタイムに捉えることができ、光学式ズームの変化を目で直接確認しながら素早く操作することができるのは一眼レフカメラだけです。写真という世界をより深く追求し、満足できる作品を撮ってもらうためには、一眼レフカメラの世界に多くのユーザーを引き込みたいというキヤノンの願いが、ボディサイズという一眼レフカメラの最も苦手だった課題に挑戦してX7が登場したのではないでしょうか。発売前のため、市場でどのような評価が得られるのかはまだわかりませんが、少なくともユーザーのライフスタイルに大きな影響を及ぼすX7の開発は、画素競争か抜け出すための一眼レフカメラの新しい方向性として期待したいと思います。詳細は、Creative Nowでいずれ紹介いたします。

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