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熱中症ミニ知識(6)- 風が吹くと涼しく感じる体感温度とは?

よく体感温度という言葉を耳にします。「体で実際に感じる温度でしょう」と思われるかもしれませんが、実はとてもあやふやなものなのです。

よく体感温度という言葉を耳にします。「体で実際に感じる温度でしょう」と思われるかもしれませんが、実はとてもあやふやなものなのです。算出する計算式もたくさんあってそれぞれ主張や考え方が異なっています。

ヒートインデックスが温度と湿度、WBGTが温度と湿度と輻射熱の値を計算式に取り入れていますが、体感温度は温度と湿度に加えて風速が要素として入ってくるのが特徴的です。

人間は、汗が気化することによって体の熱を奪われるため涼しく感じられます。つまり、風があれば実際の気温よりも低く感じるわけです。これを考慮しようというのが体感温度です。

しかし、体感温度の値が公式な場で使われることはほとんどありません。なぜなら、世界共通の定まった計算式がないからです。

有名なのはミスナールとリンケの計算式ですが、ミスナールの式は、気温と湿度しか使用しておらず風速が入っていません。そして、リンケは気温と風速しか使用しておらず湿度が入っていません。

Wind Chillという値を体感温度としている場合もありますが、これは低温下での凍傷などの対策に使用する計算式で、一般的な気温での計算には向きません。

そこで、ミスナールとリンケの計算式に風速の要素を加えた香港天文台の改良版の計算式が登場しているので、これを今回は体感温度として取り上げたいと思います。

下の表は、同じ気温と湿度で風速が1m増すごとに体感温度がどれぐらい下がるのかを算出したものです。気温は28度、湿度は「特に注意」の領域に入る85%の条件にしました。

気温が28度、湿度が85%の場合に風速が1mごとに増した時の香港天文台の改良版の計算式を使用した体感温度と他の指数との違い。

気温が28度でも風速が3mあると体感温度は24度になり、なんと4度も違います。そもそも定まっていない計算式なのでだから大丈夫とは言い切れませんが、体温を下げる方法の一つとして風を当てるのは有効なので、熱中症の心配を減らすことができます。

ただし、ずっと扇風機の風に当たっていると体の水分がどんどん奪われるのでこまめに水を飲んだり、あるいはタイマーを使用して一定時間で切れるようにしたほうがいいでしょう。また、扇風機は直接体に当てて体温を下げるだけではなく、サーキュレータと同様に部屋の空気を対流させることもできるので夏でも冬でも節電に役立ちます。

ちなみに湿度が100%に近くなると汗が気化しにしくくなるため、扇風機を使用してもほとんど涼しく感じません。

ところで、風速3m/sとは言いますが、実際にはどれぐらいの強さなのでしょうか。以前にさまざまな風を起こす装置の風速を測定したことがあります。

それをまとめたのが下の表です。3m/sだとちょうど扇風機やサーキュレータの中程度の強さの風です。扇子でも真剣に扇げば2m/s以上にはなります。扇ぐという行為が意外に強い風を起こすことがわかります。

風を起こす装置の測定結果。

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