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望遠鏡導入計画

(12)スカイポッドVMC110Lのアライメント準備

自動導入に大切な天体望遠鏡の向きを調整するアライメントの作業を行ってみたいと思います。前回紹介したスポットファインダの調整の続きになります。

 

アライメントの準備

 

ファインダの調整が終了したら、いよいよアライメントを行ないます。「スカイポッドVMC110L」のアライメントは2個以上の基準星で調整するというオーソドックスなタイプで、何か困るというわけではないのですが、ライバルのMEADEやCELESTRONは、低価格なモデルにもCCDカメラを利用したより先進的なアライメント方式を導入しはじめているため、ビクセンにもそろそろ新しいテクノロジーの導入を期待したいところです。

 

赤丸で囲まれている本体と鏡筒の標をコントローラを操作して合わせます。

 

望遠鏡を左右軸を水平にして西の方角に向ける必要がありますが、ほとんどの場合、単に望遠鏡を置いただけでは地面が平でなかったり、脚の開き方や引き出し方の違いによって水平になることはほとんどありません。正確に設置するには水準器が必要です。

 

「スカイポッド経緯台」のアライメントは、まず、コントローラから指示して、鏡筒が水平になるホームポジションにする作業から始まります。次に経緯台が水平になるように設置し、望遠鏡を西に向けます。あまり神経質になる必要もないようですが、水準器と磁石を使用して正確に設置したほうが作業全体が楽になります。水準器と磁石なんて持っていないよ、という人もいると思いますので、今回はiPhoneアプリの「コンパス」と「水準器HD」を使用しました。iPhoneを望遠鏡のどの面に当てて調整するかという悩みはありますが、携帯電話なので常に持ち歩いている確率が高く、水準器や磁石のようにどこかにしまい損なって行方不明になる心配もありません。

 

iPhoneに標準でインストールされているコンパスというアプリです。下のほうに緯度経度も表示されています。現在地の緯度経度を調べるのであればこれで十分です。

 

水準器というiPhoneアプリです。中央に小さな◯が来るように三脚を調整します。

 

水準器の別画面です。このような表示に変更することもできます。実物の水準器でも多機能なものはありますが、iPhoneアプリのほうがかなり安いですね。

 

コントローラの操作

 

ある程度正確に水平に設置して西に向けた段階である程度追尾できますが、アライメントを行なったほうがより正確に天体を追っていくことができます。アライメントの作業は、コントローラに星図を表示して基準星を画面の中心に移動したら、次に鏡筒の視野の中心に本物の星を導入します。この作業を繰り返して精度を高めていきます。アライメントの作業は以下のように行ないます。

 

(1)コントローラは、十字に並んだキー+右下キーの計4個の組み合わせで1つの群れになっています。これが2つ上下に並んでいます。液晶の下の表示と一致する右のキーを操作します。

 

コントローラの各キーの役割です。実際にはこのようなキーの名称はコントローラ上には書かれていません。

 

(2)①の「星図」と同じ位置にある「選択」キーを押して、「SCOPE(望遠鏡)」モードから「CHART(星図)」モードに画面を切り替え、任意の基準星を決めて画面の中心に移動します。

 

右下に表示されている①「星図」キーを押します。「SCOPE」モードから「CHART」モードに切り替えます。

 

操作の説明なのでとりあえずシリウスを基準星にするとしましょう。なお、夜間の撮影は問題ができず昼間に撮影しました。その関係で表示されている時間などは適当です。ご了承ください。

 

「上下左右」のキーで中心に入れながら「ズーム拡大」キーを押して少しずつ拡大して正確に中心に入れて行きます。

 

シリウスを正確に中心に入れることができたら②と一致する「導入」キー(さっきまで「星図」だったキー)を押します。

 

(3)「導入」キーを押すと「SCOPE」モードに切り替わり、基準星が自動で視野に導入されます。「上下左右」キーを使って望遠鏡の方向を変え、視野の中心に基準星を正確に入れます。

 

望遠鏡が動きだしてシリウスを視野に導入します。ただし、この時点ではまだアライメントが終了していないため、視野の中心にくることはほとんどありません。

 

(4)「SCOPE」モードでは星図が望遠鏡に連動して動くので、当然ながら画面の中心から基準星がずれてしまいますが、このまま「アライメント」キーを押して「はい」キーを押すと1つ目のアライメントが終了します。この段階で視野と星図のズレを望遠鏡が認識するわけです。

 

視野の中央に導入すると星図からシリウスが消えてしまいましたが気にせずに③の「アライメント」に一致するキーを押します。

 

「アライメントしますか?」と聞いてくるので左右キーを操作して「はい」を選択して④に一致する「選択」キーを押します。

 

(5)「星図」キーを押して「CHART」モードに切り替え、次に10度以上90度以内の離れた別の星で2つ目のアライメントを行ないます。つまり、この時点で(1)の作業に戻ることになります。

 

2つ目の基準星を決めて再び同じ作業を繰り返します。

 

アライメント作業の注意点

 

実は、アライメントの作業は最初とても戸惑いました。理由はいくつかあるのですが、まずどのモードの時にどのような動作になるのかが直感的にわかりづらいことです。星図モードは「CHART」、望遠鏡モードは「SCOPE」という表示なのですがどうしてもピンときません。そして、もっとも困るのが画面に表示されているキーと実際に押すキーが一致しづらい配置になっていることです。上に掲載した写真をもう一度見てもらいたいのですが、十字に並んだ4つのキーとその右下にあるキーの計5つで1つの群れが構成されており、これが2つ縦に並んでいます。キーには何も表示がなく、どのような機能を実行できるのかは、液晶画面に表示されるのですが、実際のキー配置とは異なって横に並んでいます。そして、画面の右に表示されたキーが上の1つ目の群れで、左が2つ目の群れの表示になっているのですが、これはどう考えても右と左の配置が逆のほうが自然です。

 

最初と同じ写真ですが、液晶画面では1つ目の群れと2つ目の群れの表示を逆にしてもらえると操作ミスが確実に減ります。

 

これは個人的な感覚的で言っているわけではなく、例えば本は縦書きは上から下、横書きは左から右に文字が並びます。MS Excelのセルも上から下、左から右の順で並んでおり、基点は常に上と左が多いからです。このため、キーの操作ミスが非常に多くなってしまい、現在どの段階にいるのか途中でわけがわからなくなってしまいます。しかし、画面の表示を変更する機能はないので、予め練習を積んで暗闇でも間違えないように慣れておくか、キーの横にテプラで自分なりのヒントを貼っておくしか対策がありません。ちなみにSX赤道儀用の「STAR BOOK」は縦型のデザインのため、画面の対応表示とキーは同じ配置になっています。

 

アライメントが終了したら、いよいよ自動導入です。観たい天体を「CHART」モードで指定して、「導入」キーを押して導入します。次回は実際に天体を観測した様子などをレポートしたいと思いますが、なぜかこのところずっと筆者の住んでいる地域は雨か曇りで星が見えません。ここまでの準備は順調でしたが作業が進まなくなり心配になってきました。

 


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〈連載目次〉

「望遠鏡導入計画 - 1 金環日食に向けて機材を検討する」
「望遠鏡導入計画 - 2 メーカーはやはりタカハシか?」
「望遠鏡導入計画 - 3 どのタイプの望遠鏡を選ぶか:基礎編」
「望遠鏡導入計画 - 4 どのタイプの望遠鏡を選ぶか:鏡筒編」
「望遠鏡導入計画 - 5 どのタイプの望遠鏡を選ぶか:架台の種類編」
「望遠鏡導入計画 - 6 どのタイプの望遠鏡を選ぶか:経緯台編」
「望遠鏡導入計画 - 7 どのタイプの望遠鏡を選ぶか:赤道儀・三脚編」
「望遠鏡導入計画 - 8 購入条件に合う天体望遠鏡を探す」
「望遠鏡導入計画 - 9 天体望遠鏡はこれに決定!」
「望遠鏡導入計画 - 10スカイポッドVMC110Lを組み立てる」
「望遠鏡導入計画 - 11スカイポッドVMC110Lの設定と調整」
「望遠鏡導入計画 - 12スカイポッドVMC110Lのアライメント準備」
「望遠鏡導入計画 - 13スカイポッドVMC110Lのアライメントを行なう」
「望遠鏡導入計画 - 14危険が伴う太陽撮影!NDフィルタも注意が必要」
「望遠鏡導入計画 - 15日食撮影用のフィルタを用意する」
「まさに神秘の天文現象 ? 2012年5月21日の金環日食」
「金環日食のクライマックスを13秒のビデオで」

 

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著者プロフィール

マイナビ出版 天体観測&撮影編集部(出版社)
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