2012.05.07
ずっと天候が悪く、アライメントのテストができませんでしたが、ようやくチャンスが巡ってきました。基本的には前回の「望遠鏡導入計画 – 12 スカイポッドVMC110Lのアライメント準備」の続きとなります。
アライメントを実際に行なう
手順は前回の説明の通りなのですが、最初は望遠鏡を水平にして西に向ける作業に手間取りました。一番の問題はiPhoneを置くことができる平らな面がないことです。iPhoneに標準でインストールされている電子コンパスの「コンパス」と有料アプリの「水準器」を使用してみましたが、常に手で経緯台の一部に当てながら水平位置や方角を調整しなくてはならず作業がはかどりません。特に「コンパス」は気のせいかもしれないのですが、経緯台に近づけると誤差が生じているように思えてならないのです。もしかすると望遠鏡のパーツがなにか影響を及ぼしているのかもしれません。この問題に関しては、改めて良い方法は考えるとして、とりあえず今回は手でiPhoneを支えながらアライメントの準備を始めました。
水平に調整して西に望遠鏡を向けたら、次は基準星を決めてアライメントを行ないます。手順については前回詳しく紹介しているので、実際に作業をした感想を中心に話を進めたいと思います。「スカイポッド経緯台」に付属している「STAR BOOK-TypeS」コントローラの液晶画面はバックライトで明るくなるため視認性はそれほど悪くはありません。しかし、キー自体が発光したり何か表示があるわけでもないので前回指摘したように液晶画面の表示とキーの並び順の問題もあってどうしてもキーを押し間違えてしまいます。一度キー押し間違えてしまうと暗闇ということもあってその後の操作が混乱してしまい、これがもっとも時間のロスにつながってしまいました。アライメント方式は基準星を指定してズレを修正するオーソドックスなタイプですが、この問題さえなければ特別に使いづらいものではないように感じました。
さて、テストではちょうどよい位置に見えていた金星を基準星として調整し、次に月、そして小犬座のプロキオンを基準星にしてアライメントを行なってみました。まず、「CHART(星図)」モードで液晶画面の中央に金星を入れます。この際、星図を拡大して正確に中央に入れておく必要があります。星図の中央に基準星を入れて「導入」キーを押すと望遠鏡が自動的に金星に向くのですが、正確に設置していれば最初の導入がとても楽になります。残念ながら今回は設置の精度がかなり悪かったようで、望遠鏡の視野と金星の位置のズレが大きかったため、スポットファインダを使用して導入しました。
視野の中央に金星が入ったら「アライメント」キーを押して確定します。この時点で望遠鏡が考えていた金星の位置と実際の位置のズレを認識します。この作業を繰り替えすことによってより精度がアップするわけです。3つ目の基準星であるプロキオンとの位置のズレを覚えさせたら、いよいよ目的の天体を指定して自動で導入&追尾させるわけですが、なんと次第に雲が多くなってきてしまい暗い天体が見えづらくなってしまいました。せっかくアライメントの作業が終了したのに残念です。それでも月と金星は明るいので見えており、この2つを観賞することにしました。
初めてアライメントを行った割には自動導入や自動追尾はそこそこの精度でした。望遠鏡を設置した場所は周辺にさまざまな光が溢れていて天体を鑑賞するには決して良い環境とは言えません。そのため、かなり明るい星でないと肉眼で確認することができず、暗い天体はどこにあるのかも見当すらつきません。しかも「スカイポッドVMC110L」のスポットファインダは等倍のため、目で見えている天体を導入するのには便利なのですが、見えない天体に対してはまったく役に立ちません。しかし、コントローラの星図上で指定すれば暗い天体でも導入できるのでファインダを使用しなくても困ることはありませんでした。逆に周囲の光の影響で見えていなかった天体が望遠鏡を通すと集光されるため見られるものが多く感動しました。ただ、どうも経緯台の左右軸に少し遊びがあるようでピント合わせなどで鏡筒に触れた際に視野がズレてしまうことがありました。高倍率での観賞やデジタルカメラでの撮影ではこのズレが致命傷になるため、何か対策を考えないといけません。
せっかく月が見えているので鏡筒にデジタル一眼レフカメラを取り付けて撮影してみました。鏡筒をそのまま交換レンズと同じように使用する直焦撮影という方法です。撮影のパターンについては、後日また詳しく紹介しますが、「VMC110L鏡筒」は小さいながらマクストフ・カセグレン方式なので1035mmの焦点距離があり、接眼レンズを使用する拡大撮影にしなくてもかなり大きく写すことができます。月と太陽の見かけ上の大きさはほぼ等しいので太陽撮影も直焦撮影でいけそうです。ちなみに皆既日食や金環日食は、この見かけ上の大きさが等しいという偶然のおかげで見られる天文現象です。では次回は太陽撮影に向けた準備に入りたいと思います。

月をフルサイズの撮像素子のデジタル一眼レフカメラで撮影しました。フレームいっぱいに写すよりも少し余裕があったほうが撮りやすいのでこれぐらいが丁度いいかもしれません。APSサイズの撮像素子でしたらもう少し大きく写ります。
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〈連載目次〉
「望遠鏡導入計画 - 1 金環日食に向けて機材を検討する」
「望遠鏡導入計画 - 2 メーカーはやはりタカハシか?」
「望遠鏡導入計画 - 3 どのタイプの望遠鏡を選ぶか:基礎編」
「望遠鏡導入計画 - 4 どのタイプの望遠鏡を選ぶか:鏡筒編」
「望遠鏡導入計画 - 5 どのタイプの望遠鏡を選ぶか:架台の種類編」
「望遠鏡導入計画 - 6 どのタイプの望遠鏡を選ぶか:経緯台編」
「望遠鏡導入計画 - 7 どのタイプの望遠鏡を選ぶか:赤道儀・三脚編」
「望遠鏡導入計画 - 8 購入条件に合う天体望遠鏡を探す」
「望遠鏡導入計画 - 9 天体望遠鏡はこれに決定!」
「望遠鏡導入計画 - 10スカイポッドVMC110Lを組み立てる」
「望遠鏡導入計画 - 11スカイポッドVMC110Lの設定と調整」
「望遠鏡導入計画 - 12スカイポッドVMC110Lのアライメント準備」
「望遠鏡導入計画 - 13スカイポッドVMC110Lのアライメントを行なう」
「望遠鏡導入計画 - 14危険が伴う太陽撮影!NDフィルタも注意が必要」
「望遠鏡導入計画 - 15日食撮影用のフィルタを用意する」
「まさに神秘の天文現象 ? 2012年5月21日の金環日食」
「金環日食のクライマックスを13秒のビデオで」
著者プロフィール

- マイナビ出版 天体観測&撮影編集部(出版社)
- 天文イベントや天体観測・撮影、宇宙関連グッズに関する情報を紹介していきます。