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変化する技術、変わらない表現 エンタクルグラフィックスと辿るWebの10年

Flashの隆盛、iPhoneの登場、スマートフォンの普及‥‥。
サイト制作の技術や環境は時間の経過とともに大きく変化している。
そんななか、設立10周年を迎えたエンタクルグラフィックスに
技術の変化とWebサイトにおける表現の関係ついて話をうかがった。

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フルFlashサイト全盛期

 デザイン、開発、プランニング、写真に動画などオールマイティなスキルを持つエンタクルグラフィックスは、ゲーム業界のプロモーションサイトをはじめ、多彩なクリエイティブを手がける。2004年10月の創業からこの10年余りに起きたWeb業界の変化を、代表の岩田文人氏(写真中央)、相山敏明氏(右)、小平麻美氏(左)と振り返ってみた。

「会社を立ち上げた当初は、リッチコンテンツといえばフルFlashサイトで動的に表現するのが一般的でした。ゲームサイトと親和性の高いFlashサイトを得意としていた弊社では、多くのフルFlashサイトを制作していました」(岩田)

 表現力が高く、Flashプレイヤーをインストールしていればどのブラウザ環境でも同じように動作するFlashは、こうしたサイト制作において当然の選択肢だった。

「フルFlashサイトは表現の自由度が高く、見て触れて面白いサイトが多く、弊社でもゲームの体験版がシームレスに体験できるようなサイトや、本のようにページをめくれるサイトなど、色々と制作していました。『このサイトはこういう特徴がある』というのがはっきり表現できる頃でした」(岩田)

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サモンナイト ツインエイジ
2007年にフルFlashで制作。ポインタをタッチペンに見立てるなど、サイト上で実際にゲームの体験版をリアルに、かつシームレスにプレイできるWeb制作を行った
©FLIGHT-PLAN ©2007 NBGI

ノンFlash化への流れ

 2009年にはActionScriptで3Dの描画が行えるライブラリ「Papervision3D」が登場するなどFlashが複雑化する一方で、別の新しい技術もでてきた。それには、FlashをサポートしないアップルのiPhoneやiPadが浸透してきた背景がある。JavaScriptやGIFアニメーションなどを使って、リッチな表現を行うようになっていったのだ。

「2007年にiPhone が登場しても、ゲーム系サイトはリッチコンテンツ全盛でしたので、しばらくは影響ありませんでした。しかし2010年頃には、他業種サイト同様にスマートフォンサイトの方を重視して、PCサイトは予算の関係で簡素なものにするという流れにシフトするようになりました」(相山)

Flashが使えないとなると、得意とするリッチな表現が実現しづらくなるのではないだろうか。

「JavaScriptやGIFアニメーションを使うなんて、10年前に戻されたような感じでした。当時と比べれはJavaScriptによる表現の知見も増えていますが、JavaScriptの性質上、やはりFlashと比較すると表現の制約が出てきます。ただ、その中から新たな表現やトレンドを模索して、“サイト演出”としての表現だけでなく、読物や動画を使った“コンテンツ”をリッチにするなど、Flashで表現していた頃と同じゴールを目指せるようなサイトを提案をするようになりました」(岩田)

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サモンナイト 5
HTMLとJavaScriptで2012年に制作。表現や要素はシンプルだが、画像の表示タイミングや動き、動画の利用などでアクセントをつけている
©BANDAI NAMCO Games Inc

これからのWebデザイン

 これからのWeb業界のトレンドはどのようになっていくだろうか。

「一般的なWebサイトは、フラットデザインなど、マルチデバイスに対応したデザインが引き続きトレンドになっていくと思います。しかし、ユーザーに体験を促すリッチコンテンツの存在は、Webデザインには不可欠なものです。そうした表現を実現するために、JavaScriptやHTML5、ムービーなどが有効な選択肢となっています。弊社では、それらに加えてFlashでの選択肢も提案しています。なぜなら、Flashも進化しているからです」(小平)

 短いスパンで技術革新や環境の進化が起きるWeb業界の変動は、制作現場において頭の痛い問題となってはいないのだろうか。

「技術は表現したいコンセプトを実現するための手段でしかないので、新しいものが必要になれば取り入れるというだけのことです。技術の進歩に振り回されるのではなく、新しい技術を取り入れること自体を楽しむようにしています。弊社に関しては、ゲーム以外の業種のサイト制作はもちろん、最近ではゲームUIデザイン、店舗設計、PV制作、アパレルブランドとのコラボレーションなど、仕事の幅が大きく広がっています。どの業務においても技術が先ではなく、表現の手法として技術があるという気持ちで、今後もいい作品を数多く手がけていきたいと思っています」(岩田)

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モンスターハンター10周年
「モンスター図鑑」のページでは、モンスターを3Dで表現し、Flashでコンパイルしている。自作の開発アプリを使って制作された。
©CAPCOM CO.,LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

10周年記念 展示会&パーティ

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エンタクルグラフィックスが創立10周年を迎えた2014年11月末、スタッフが「10」をコンセプトとした作品を発表する一日限りの展示会&パーティ「EAE10」が、東京・原宿のBA-TSU ART GALLERYにて行われた。インタラクティブコンテンツ、ファッションプロダクト、写真、映像作品から書にいたるまで、人柄があふれるさまざまな作品を多くの来場者が楽しむ姿が印象に残るイベントとなった。なお、メインの写真に写っているのは、この展示会用に制作された、同社が10年で制作してきたWebサイトの軌跡をまとめた年表。各作品やイベントの様子は、特設Webサイトにまとめられているので、ぜひエンタクルグラフィックスの世界に浸ってみてほしい。

10周年記念スペシャルサイト「ENTWORKS14」

設立:2004年10月
代表取締役:岩田文人
所在地:〒150-0034 東京都渋谷区代官山町3-4
mail:info@entacl.com

2004年に設立されたWeb制作プロダクション。スタッフ数は20名。商品のブランディングおよびプロモーション全般に関するクライアントワークを中心に活動。HTML5やJavaScript、Flashなど案件ごとに最適な技術を活かしたWeb制作全般のほか、システム構築、アプリケーション開発、スチール撮影、映像制作、DTPと、さまざまなジャンルの制作も手がける。

エンタクルグラフィックスでは、現在マークアップエンジニアを募集中。詳細はWebサイトまで。

Web Designing2015年2月号より転載)

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