河口俊彦、将棋界を語る



みなさん、そろそろ年末年始の過ごし方を考え始めていることと思います。
ここはひとつ、こたつに入って、将棋界の偉人達の人生に思いを馳せてみませんか?


12月25日、棋界の語り部・河口俊彦七段の新刊が発売されます。
タイトルは「最後の握手 昭和を創った15人のプロ棋士」です。




タイトルの通り、時代を創ったプロ棋士たちの人生を河口七段が描いたものです。
最後の握手とは2007年に亡くなった「棋界のプリンス」真部一男九段と著者が交わした最後の握手のこと。
この部分は涙なしには読めません。


その他、大山康晴十五世名人、丸田祐三九段といった大御所から森下卓九段、屋敷伸之九段などの現役棋士まで幅広く取り上げています。


以下はあとがきからの抜粋です。


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 本書に登場するのは、戦後の復興期以後の将棋界を内部から支えた人達である。
 このころ名人を争うなど表面で活躍したのは言うまでもなく升田幸三、大山康晴であった。そして、加藤治郎、丸田祐三、原田泰夫といった人達が将棋界内部をしっかり支えていた。
 この人達に共通していたのは、戦争を体験したという事。あるとき必要あって、大山康晴の「昭和将棋史」を読んだが、そこで大山の出征中の体験を知り、考えさせられるものがあった。それは本著のなかでも書いたが、大山は戦地から無事に帰れたのを、幸運であったと信じていた。
 大山だけでなく、升田、丸田、原田、その他の人にも言えることで、皆「自分は運のよい人間なのだ」と思い、それを心の支えにしていた。
 対局に於いてだけではなく、日常の所作言動に於いてでも、筋が通っていて、信念が感じられた。
 たとえばうまそうな話を持ちかけられても、それが表に出せぬものなら、絶対に受け入れなかった。
 このように経営方針は徹底して堅実で、だから世が好景気のときは、棋士のなかからも、金儲けがヘタだ、の批判もでたが、丸田を中心とする理事会は、ビクともしなかった。それがあって、投機的な事には手を出さず、バブル崩壊のときも、何の痛手も被らなかった。
 本書は「小説新潮」に連載した文が多くを占めるが、丸田、原田、高柳といった先輩を書いているときは、世話になった事、楽しかった事などが次々に浮び、筆も速く進んだのだった。
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今の将棋界があるのもこのような先達のおかげ。
そんな彼らの人となりが鮮やかに描き出された一冊です。
ぜひ手にとって読んでみてください。

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