月ばかり満ちてゆくから僕たちは浅瀬に暮らすしかない浅蜊
「月曜日が嫌い」という君のために、
僕は会社をクビになることに決めた。
鍵を刺し捻れば軽く震へだす君のからだも軽の車両も
ガラス窓を引っ掻き回す光の群れを眺めながら、僕たちは旋頭歌を唱和する。
「流れ星に比べりゃどんな星座もクソさ」
「墜ちて消えてゆくものだけが真実だもの」
成熟は堕落でしかない。
成熟は腐敗でしかない。
成熟は罪悪でしかない。
逃げることだけを絆としてふたりカーテン越しにさやぐ樹を見る
僕が卒業文集に書いた夢は、「可能な限り週刊少年ジャンプと藤子不二雄を視界に入れないように生きること」。
君が卒業文集に書いた夢は、「私の前に現れる全てのカーブミラーの鏡面に紙やすりをかけること」。
「撃ち終えたあとのピストルみたいなの。そんなのが好き。この車のマフラーだってそうでしょう。そういうのしか愛せないだけ」
反歌
月曜の夜更け、スピンの音は止み、あとには白い息だけがのこる
2014.1.13